村上朝日堂 はいほー 


2008.4.28 ゆるさ、減少! 【村上朝日堂 はいほー】

                     

評価:3

■ヒトコト感想
過去の村上朝日堂はゆるく、くだらない雰囲気がよかった。本作は連載されていた雑誌の影響だろうか、やけにまじめで、小難しく、ゆるさとは対極にあるようなエッセイが多かった。のんびりとした雰囲気で読むつもりだったが、それは許されない雰囲気があった。そうは言っても、中には前作を彷彿とさせるようなエッセイもある。あとがきで作者が語っているように、気に入らないものをはずし、ストックされていたエッセイを追加したというのもあるのだろう。ちょっと今までの村上朝日堂と同じような雰囲気で望むと、面食らうかもしれない。

■ストーリー

せっかちで気が短い。占いには興味がない。最近の映画の邦題はよくないと思う。ときどき無性にビーフ・ステーキが食べたくなる。双子の恋人が欲しい。フィッツジェラルドとチャンドラーとカポーティが好き。この中で三つ以上思い当たる方は、誰でも村上ワールドの仲間です。はいほー!と軽やかに生きるあなたに贈る、村上春樹のエッセンス。安西水丸画伯のイラスト入り、全31編。

■感想
村上朝日堂はくだらなさがよかった。どうでもいいようなことをつらつらと書き綴り、それでいて、なぜかほっとするようなエッセイ。世間の流れからは逆流するように、周りに惑わされることなく、自分のペースで自分の好きなことを好きな時間にやる。まさに、憧れの自由人生活なのだが、それが本作からはあまり伝わってこなかった。作家としていろいろとあるのはわかる。趣味のエッセイが追加されているというのも理解できる。ただ、専門的なオペラのことを語られても、まったく知識のない読者にとってはおいてけぼりをくうだけだろう。

フィッツジェラルドのくだりもそうなのだが、幸運なことに最近その手の作品を読んでいたので、そのあたりは楽しく読むことができた。海外の文学を翻訳している作者はさぞや英語に堪能だろうとばかり思っていたが意外にも英会話が苦手というのも新鮮だった。エッセイというのは作者の人となりがかなり出るものだと思うのだが、新しい真実を知ることで、頭の中で勝手に想像していた作者象が段々と変化していくのも感じる部分ではある。それにしても高校時代から英語の小説を読んでいたというのはすごい。

このシリーズの特徴の一つでもある、ゆるい挿絵が今回は少なかった。相対的に文章が多いということになるのだが、挿絵がないエッセイは作者のストックなのだろう。この挿絵がゆるさを増幅させていたのだが、少ないことも雰囲気が変わった一因にはなっているのだろう。本作が連載されていた雑誌というのがどのようなものか良くわからない。しかし、当然面白いエッセイもあれば、つまらないエッセイもある。それらは雑誌の中で読めばまったく違和感を感じることなく楽しめるのだろう。

今までの村上朝日堂のシリーズと比べると多少のとっつきにくさはある。



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