村上朝日堂 


 2008.4.8  くだらねー感が良い 【村上朝日堂】  

                     

評価:3

■ヒトコト感想
かなり昔の作品だが、時事問題とはほぼ関係がない内容ばかりなので、そのあたりは普通のエッセイと比べると違和感がない。違和感がないかわりに、にやりと笑いながら思わず「くだらねぇー」と小声で呟いてしまうようなエッセイもある。内容はそうではなくても、あの独特な絵がその思いを増幅させる効果がある。今では売れっ子作家となった作者も、このころは、まだそれほどブレイクしていなかったのだろう。のんびりとした生活スタイルは変わらないのだが、まだ世間や批評家に対して、それほど嫌悪感をもっていないように感じた。最近の作者のエッセイがどんなものかはわからないが、この時点ではなんだかほのぼのとして、とても良いように思えた。

■ストーリー

ビールと豆腐と引越しとヤクルト・スワローズが好きで、蟻ととかげと毛虫とフリオ・イグレシアスが嫌いで、あるときはムーミン・パパに、またあるときはロンメル将軍に思いを馳せる。そんな「村上春樹ワールド」を、ご存じ安西水丸画伯のイラストが彩ります。巻末には文・安西、画・村上と立場を替えた「逆転コラム」付き。これ一冊であなたも春樹&水丸ファミリーの仲間入り!?

■感想
巻末には絵と文の担当がそれぞれ逆になったりとおまけ要素も大きい。本作はどうやらアルバイトニュースに連載されていたらしいが、今、まだアルバイトニュースはあるのだろうか?どうにもアルバイト紹介雑誌に本作が掲載されているというイメージはあまりない。内容もアルバイトとは無関係なものが多い。まったく制約がなく、自由気ままに描いているような、そんな印象が強い。

時代的な古さを感じるのは時事ネタとは限らない。本作では引越し好きだというのが書かれているが、そこで引越し先に選んだ場所が、今では都心に含まれるものを、本作の中では郊外の田舎というように書かれている。エッセイを書いた時代に、思い出として語っているので、相当昔だというのはわかる。しかし、その文章はあまりにも衝撃的だった。もう一つ衝撃を受けたのは、小説家になるためには、どんなことをすればよいかという部分で、作者ははっきりと文章を書きすぎないことと言っている。これは今までのイメージを覆させられる言葉だ。文章を書くよりも、自分のスタイルを決める。文章を書きすぎると、うまくはなるが、個性がなくなるというような言葉だ。ホントにそうなのだろうか。

へたうまな絵と肩肘張らずに読めるエッセイ。ゆっくり、のんびり読むにはうってつけの作品だろう。作者独特の感覚がかなり多くを占めているので、共感できないと思う人も多いのかもしれない。作者のエッセイをしっかりと読む前には、作者はかなりの変わり者というイメージがあるのだが、そうでもないなという印象に変わってきた。まぁ、誰でもそうなのだが、その人物の身近な話題を聞くと、一気に距離が縮まったような気持ちになる。

大笑いする面白さではない。ただ、にやりとしてしまう。エッセイとはこんなものかもしれない。




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