巷説百物語 飛縁魔


2007.6.9 恐怖とギャグが入り混じる 【巷説百物語 飛縁魔】

                     

評価:3

■ヒトコト感想
原作の雰囲気をどれだけ表現できるか。姑穫鳥の夏では散々だったので本作には期待していた。結論から言うと原作の恐ろしさは表現できていると思う、しかしそれ以上に本作独自のギャグ的な部分が強調されている。あまりにギャグの印象が強いために、せっかくの恐ろしさが吹き飛んでしまった。いかにも何かおどろおどろしい霊の存在をイメージさせながら現実的な解を導き出す。この手法は京極堂シリーズと同じだが、出てくるキャラクターの個性が強烈なのは本作だろう。あまりに原作とかけ離れたギャグ的エッセンスにちょっと辟易しながらも、最後はゾクリと寒気がするような終わらせ方をする。よくわからない作品だ。

■ストーリー

江戸の街で夜な夜な発見される黒こげ死体。誰がどうやって大の男を燃やし遺棄したのか? 色街で評判の白菊なる女の仕業との目撃情報もあるが、白菊の行く所行く所火事が発生し姿を消す。 白菊は悪評高き妖怪・飛縁魔なのか。おぎんにまで疑いをかけられ、いよいよ又市たちが真相の解明に動き出す。 同心・田所のところに転がり込んだ謎の女おきく、白菊を待ち続ける大店の金城屋。飛縁魔はこの世に実在するのか。 白菊の正体は? 又市たちが複雑に絡んだ謎を解き明かす。

■感想
続巷説百物語の中の一つを映像化した作品である本作。どうも頭で思い浮かべた主人公たちとは若干違っていたが、それらは許容範囲内だ。しかし、違和感を感じたのはところどころに登場する笑えないギャグだ。これは作品の雰囲気を大きく変えているだけでなく、恐ろしい雰囲気をぶち壊すようにも感じられた。まあ、見方を変えれば深刻な内容である本作を明るいタッチに変える役目は果たしている。

いかにも妖怪の類か、もしくは霊の仕業だと思わせておいて、又市が事件の真相を暴く。又市の怪しさもさることながら、おぎんのインパクトもすごい。そして白菊の恐ろしさと怪しい表情。普段は落ち着いて、しおらしい白菊が正体を明かし、すべてを告白する場面では、まるで別人のまるで口裂女にでもなったようなものすごい表情をしていた。演出の効果なのだろうが、この顔だけで
鳥肌が立ってしまった

監督が「トリック」などを撮った堤監督なのでこうなったのか。もしくは堤監督だからこそこれほど恐怖感を表現できたのだろうか。できることならギャグ部分を除外して、リングの監督でもある中田秀夫にでも撮ってもらいたい。また違った魅力がでてくるのかもしれない。

相当な京極夏彦のファン以外はあまり見る価値はないのかもしれない。



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