続巷説百物語 


2006.5.24 短編集ながら壮大なストーリー 【続巷説百物語】

                     

評価:3

■ヒトコト感想
前回の巷説百物語が完全な短編なら、本作は章立てされているような短編集だ。短編としての形を保ちながら、前半で伏線を張り、中盤で物語を盛り上げ、終盤でそれらを一気に片付ける。それぞれの短編で登場するキャラクターがその後の展開に非常に重要であり、何一つとして無駄なものがない。相変わらず文章は難しく、決して読みやすいとは言えないが、洗練された構成と計算されつくしたようなストーリーに最後まで目が離せない。

■ストーリー

無類の不思議話好きの山岡百介は、殺しても殺しても生き返るという極悪人の噂を聞く。その男は、斬首される度に蘇り、今、三度目のお仕置きを受けたというのだ。ふとした好奇心から、男の生首が晒されている刑場へ出かけた百介は、山猫廻しのおぎんと出会う。おぎんは、生首を見つめ、「まだ生きるつもりかえ」とつぶやくのだが…。

■感想
前回明らかにされなかった又市やおぎんの出生の秘密がおぼろげながら見えてきた。特別な能力があり、ちょっとした正義の味方風味を出していた前作の又市一味だが、今回はその負の部分も見え隠れしている。なにやら怪しい雰囲気もあり、壮大な物語の様相がみえかくれしてきた。

前作はなんとなく、ブラックな日本昔話のようにちょっとした教訓も含まれていたのだが、今回はより深く悲しいエピソードが多い。悲しすぎる境遇から又市たちが救い出しても、それすら悲しい結果には変わりがない。全編通して、かなり重い話が多いが、それらをすべてひっくるめて最後に解決へと導いている。

最終的に一つの壮大な事件の幕は閉じられたのだが、その後の又市達の消息が絶たれたことから、次回作ではさらに深い物語となるだろう。百介の目線から感じられることはそのまま読者が感じることであり、又市達が消息不明になれば気になり、なんだからよくわからない
闇の物との最後の戦いがあったとなればその内容も気になる。本作の終わり方が気になる部分も多少残しているので、それは次回作できっちりと始末してくれるのだろう。

短編集でありながら、本作全体で起承転結がきっちりと示されているすばらしい作品だ。



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