ハゲタカ 下 


2008.1.19 再生よりまずは買収 【ハゲタカ 下】

                     

評価:3

■ヒトコト感想
上巻は企業買収される側とする側、両面から物語が描かれていた。血も涙もない、利益優先である外資の考え方など、衝撃を受ける部分は多かった。バブル崩壊前の日本では、リアルに行われていたことなのかとも思tった。上巻のインパクトに比べると下巻はいくぶんおとなしいように感じるが、それでも外資の力強さに対する国内企業の弱腰を感じずにはいられなかった。本作は結末まで、じっくりと企業買収について描かれている。素人考えなのだが、買収よりもその後の再生の方が大変だと思うのだが、その描写にあまりページは割かれていない。あるのはまず、買収第一ということだ。

■ストーリー

企業再生が軌道に乗りはじめた頃、鷲津政彦は元銀行員・芝野健夫、老舗ホテルオーナーの娘・松平貴子と偶然出会う。二人と接触を重ねるたびに、鷲津の過去が明らかになっていく。そこに潜むある事件とは?そしてニューヨークから日本に戻った鷲津の真意が判明した瞬間、驚愕のクライマックスが訪れる。

■感想
企業を買収し、再生させ、そして高く売る。外資の基本はこの考えに基づいているのだろうが、まず本作は最初の買収というものに力を注いでいる。経営者の怠慢があったとしても基本的には破綻した企業なので、そう簡単には再生できないと思う。しかし、本作の鷲津たちは再生はできるものと考え、買収にのみ力を注いでいる。百億以上の金をつぎ込み企業を買う。それほどの利益が見込めるからなのだろうが、どうも素人にはリスクが大きいようにしか思えない。それがまさに素人目線なのだろうが。

本作は外資(鷲津)の企業買収と芝野の企業再生を上巻から描いているが、真の目的は別にあることを最後の最後に気づいた。確かに、上巻の冒頭で謎の出来事が描かれていたが、そのことをすっかり忘れていた。結末ではすべての黒幕と思わしき人物と対決する鷲津だが、なんだかそのあたりはどうでもいいように感じてしまった。黒幕の黒幕たる悪さをそれほど感じることもなく、どちらかといえば鷲津側の人間のように感じたからだ。

企業買収の厳しさと外資が資本へ入ることへの嫌悪感。現実にどのようなことが起こっているかわからないが、外資が介入することで、破綻した企業が再生しているのは事実だろう。それを考えると、日本企業には必要悪なのかもしれないと思えてきた。時代遅れの親族経営を糾弾する意味でも必要なことであり、日本的義理人情というのに縛られないのも外資のよいところなのかもしれない。

この手の作品を読むのは本作が始めてだが、かなり熱中して読むことができた。すべてが現実に沿っているとは思わないが、当たらずとも遠からずなことが起こっているのだろう。



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