読まれる覚悟 


 2025.7.5      厄介な作家から、多少イメージは和らいだ 【読まれる覚悟】


                     
読まれる覚悟【電子書籍】[ 桜庭一樹 ]
評価:2.5
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■ヒトコト感想
ベテラン小説家である作者なりの読まれる覚悟というのが描かれている。「少女を埋める」で強烈にやっかいな人物であるという印象のあった作者が、また自分の主張を公に叫ぶために作品として出版したのかと深読みしてしまった。読む前は、例の批評家とのバトルをさらに発展させた何かが描かれているものと思っていたのだが…。思いもよらず反省や後悔の念が描かれていた。

ベテラン作家としての立場を考え、自分が思っている以上に声が大きい状態になっていることの驚きも描かれていた。有名なベテラン作家が批評家とのバトルを作品として描くと、大きな反響になることは間違いない。当初思い描いた厄介な作家という印象は、本作を読んでかなりなくなったのは事実だ。

■ストーリー
小説は、読まれてはじめて完成する。だから、たくさんの人に読んでほしいと思うのは、小説家の性。でも、いいことばかりではありません。誤読されたり、批判されたり、神様みたいに言われたり。そんなとき、誠実に応え、自分の心を守って書き続けるための、《読まれ方入門》。「小説を一生懸命書いて、誰かに読まれたいと願って、それなのにいざ読まれるとなると、辛いことも起こります。矛盾しているかもしれませんね。 わたしは、小説家という仕事には〝読まれることそのものの痛みがつきものなんじゃないかと思っています。解釈されることは、傷を受けることだからです。」

■感想
作品は出版してからは読み手にある程度はゆだねられるらしい。SNS等で作品の批評をするのは素人であっても気軽にできるようになった。その場合に作者は素人の批評に対しては厳しく言うことはなく、見守るスタンスのようだ。

たとえひどい誤読があったとしても、それを作者自身が指摘することはない。まぁ、それが正しいのだろう。プロの批評家となるとまた話は違ってくるようだ。これは「少女を埋める」でさんざんバトルが描かれていたのでわかっていたことだが…。

ファンダムということで、ファンが二次作成することについてもある程度寛大なようだ。逆にうれしいとも語っている。自分の中では、作者がこのあたりの感想を公にすることはほとんどないので、原作者がどのような気持ちで二次制作された作品を知るのかは気になるところだった。

有名なキャラクターであればある程度しょうがないとして、うれしいと思っていたことには驚いた。自分の意図しない形でキャラクターが使われることもあるのだろう。それを許す寛大な心が必要ということだ。

あとがきでは「少女を埋める」でのバトルについての思いも語られている。様々な反響があったようだ。そして、作者は売れっ子ベテラン作家なので、その影響力が思った以上に大きいということも認識したようだ。自分的にも有名作家が批評家との認識の違いを赤裸々に作品として描いているものを今まで読んだことはない。

名指しされた批評家がその後、どうしたのかは不明なのだが…。業界的には有名人となったことは間違いないだろう。

作者のイメージは、厄介な作家から、多少和らいだのは間違いない。



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