spring another season 


 2026.6.14      springのスピンオフ作品 【spring another season】


                     
spring another season (単行本) [ 恩田陸 ]
評価:2.5
恩田陸おすすめランキング
■ヒトコト感想
「spring」のスピンオフ作品。springの主人公であるHALと仲間たちの関係性が描かれており、スピンオフなので当然なのだがspringを読んでいる前提の短編集となっている。HALが天才的なダンサーであり振付師でもある。HALはバイセクシャルであり、フランツという恋人がいる。本作で特に語られるのはフランツ視点の物語だ。HALの魅力とHALへの嫉妬。そしてHALの魅力に取りつかれていく者たち。

特に強烈なのは、HALのことを家に連れてきたフランツは、そこでフランツの母親がHALのことを気に入ってしまう描写だ。実の息子を嫉妬の目で見るフランツの母親。同性ならまだしも、異性の親から嫉妬の目で見られるHALという存在のオールマイティーさが強烈に描かれている。

■ストーリー
けれど今、こうして僕らは一緒に踊っている。戦っている。互いを理解するために、対話するために。二人の神に近づくために。本編『spring』では描ききれなかった秘められし舞台裏に加えて、深津、ヴァネッサ、ハッサン、フランツ、そして萬春自身はもちろん、永遠の師匠ジャン・ジャメやエリック・リシャールの教師コンビ、ロシア留学を果たした滝澤美潮など様々なキャラクターたちの気になる過去と未来を描く全12章の小説集。中編「石の花」ほかたっぷりの書き下ろし&『spring』刊行時に期間限定で公開された幻の一編「反省と改善」をはじめ、これまでに明かされた『spring』のストーリーを余すところなく完全収録。

■感想
HALだけでなく、その周りのダンサー仲間たちとの関係が語られる短編もある。「VI DANCE im Matisse」5人のダンサーによる練習風景が描かれている。HAL、ヴァネッサ、フランツ、ハッサン、深津の5人なのだが、その中でフランツとハッサンの確執が描かれている。

仲の悪さはダンスで一発でわかる。フランツとハッサンは演出家でもあるHALに甘えている状態だった。これが普通の演出家ならば、我慢してそれなりのダンスをするのだが…。同世代という気安さが良くわかる短編だ。

「眠りの森」は印象的だ。フランツの母親のユーリエとHALはかつての愛人だった。そして、今はフランツとHALが恋人同士となっている。ユーリエからすると複雑な心境であることは間違いない。息子がかつての自分の愛人とつきあっている。

そして、自分が寝ている家でHALと息子が過ごしている。複雑なユーリエの心境はわかるとしても、ユーリエがそのことを隠すことなくフランツに暴露するのが強烈だ。嫉妬心すらもフランツにぶつけている。ここまであからさまな親子関係はすさまじい。

才能がきらめくバレエ団の中で、特にひときわ輝くHALの存在を他者はどのような視点でみているのか。周囲にいるダンサーもただものではないのは間違いないが、HALはそれを凌駕する。フランツの晩年を描き、それまでの人生を語る短編もある。

また、HAL自身も晩年となり、自らのバレエ人生を語る短編もある。才能あるダンサーはただ正しく踊るだけではだめだとHALにいわれてしまう。こうなると、もはやセンスの勝負ということになり、HALに勝てる存在はないということにもなる。

HAL中心の他視点の短編集だ。



おしらせ

感想は下記メールアドレスへ
(*を@に変換)
*yahoo.co.jp