ソウルズ【電子書籍】[ 田口ランディ ]
評価:3
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■ヒトコト感想
田口ランディの短編集。音楽を通した宗教的な体験だとか、なんとなく惹かれあう男女だとか。自分の中で引っかかる部分があれば、強く印象に残るだろう。そうでなければ別世界の物語として何の印象にも残らずに読み終わってしまう可能性すらある。スピリチュアルな部分や、作者独自の考え方というのはそれなりにインパクトがある。
ただし、合わない人にはとことん合わないだろう。過去の自分の体験に照らし合わせたり、過去の作者の作品に共感できたような人には、はまる何かがあるのかもしれない。いつものとおり、広島だとか祖父の話だとか、そのあたりも登場してくる。すでに作者の作品をいくつか読んでおり、ある程度耐性ができていたので問題なく楽しめた。
■ストーリー
きっと、人はつながっているフォルクローレ・デュオを組む、とてつもなく食えない僕ら。ある冬の日、病院での仕事の依頼が入る。そこには特別な観客が待っていた。ふと訪れる日常の一瞬の奇跡が、世界をやさしく包みこむ、十の物語。
■感想
「学校の幽霊」は、いじめをテーマとした短編となっている。恐らくだが、作中の物語の人物と同年代であればまた違った感想をもったことだろう。自分の中では学生時代ははるか昔の話なので、多少は昔を思い出しながら物語を楽しむことができたが、リアルな感覚というのはない。
どうしても大人目線で考えてしまうと、異なった印象となる。もし、自分が学生時代にこの作品に出合っていたとしたら、人生経験が未熟というのもあって、かなり作者の短編に感銘を受けていたことだろう。
目に見えないものをどれだけ感じることができるのか。人によっては琴線に触れる何かがあるのかもしれない。それら目に見えないものではない、ヨットの話がよかった。ヨットに心血を注いでいた女が、もてるためにか弱い女へと変化していく。
いざ、セレブの男とのパーティでヨットに乗るような場面に対して、昔の血が騒ぐことになる。激しい波にさらされたヨットを救うためにはどうするのか…。昔の彼氏と再会し昔の名前で呼ばれ、競技ヨットの激しさを思い出す。。。ひどく現実的な物語だ。
本作はあとがきが良い。作者の本意ではないのかもしれないが、本編の短編よりも心がこもっているというか、読む者の心に響く何かがある。あとがきこそが、作者の真に言いたいことなのだろう。他の作品でも作者のあとがきにはそれなりに感動する何かがある。
本編よりもあとがきに響く言葉があるというのは、作者としてはどうなのだろうか。フィクションではなく、作者の経験を語るエッセイは良い作品が多いのは間違いない。「できればムカつかずに生きたい」は、かなり良い作品だった。
エッセイの方が心に響く何かがあるのは間違いない。