できればムカつかずに生きたい / 田口ランディ
評価：3.5
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■ヒトコト感想
強烈な作品だ。作者の兄のことや、家族のことについてはその他のエッセイである程度知っていたが、これほど赤裸々に語られると衝撃を受けてしまう。特に作者の家族関係についてのエッセイは衝撃的すぎる。ひきこもりの兄が死んだ経緯を事細かに語っている。DVの父親とノイローゼの母親。本作だけ読むと、なぜ作者だけがそんな環境の中でまともに育ったのかが疑問に思うほどだ。
かなりハードモードな人生であることは間違いない。作家として成功し、自分の思いを赤裸々に語る。兄が死に母親が死に、DVの父親とふたりっきりになった時の父親との距離感。世間にある様々な問題が、この家族に凝縮されたような感じだ。今だから言えるというのもあるのかもしれないが…。衝撃的な作品だ。
■ストーリー
引きこもりの末亡くなった兄のこと、大人に絶望していた17歳の頃について、少女たちの心情、「いじめ」の本質について考えたこと…。生きにくいこの時代で悩み考え抜いて得た、ヘヴィでリアルな心の処方箋。
■感想
冒頭から重い話が続いていく。家族関係が崩壊しており、ひとりだけ作者がその家族から逃げ出している。いつまでも家族のしがらみからは抜け出すことはできない。母親からかかってくる愚痴の電話。酔った父親からかかってくる電話。
それらに嫌気がさした際に、どのようにしてそこから脱却したのか。作者と兄との関係もすさまじい。ひきこもりの兄。原因は家族にあるのだろうが、引きこもりの末に餓死で死亡するなんてのは家族からすると最も影響の大きな死なのだろう。作者の作品である「コンセント」の元ネタとなる出来事なのだろう。
精神的な部分も語られている。主婦となり子供が生まれ、変化が起きる。兄が死んでからふさぎ込んでいた家族の雰囲気を大きく変えたのが孫の存在というのは強烈だ。一時的であれ、両親に活気が戻り良い方向へとすすむのは新しい命の力なのだろう。
両親に孫を見せることである意味最大限の親孝行をしているということだ。DVの父親との関係についても、老人となり力が弱くなった父親との接し方についても様々な感情を吐露している。「冷たい女」と父親から言われるくらいが良い関係となるのだろう。
作者の正直な感情がとても心地良い。きれいごとではなく、周りからどのように批判されようが本心を語る。ネット上でのコラムリストが売れっ子作家になる。少女時代にプチ家出を繰り返しており、寺山修司の元に通い続けるなんてのは、普通の少女ではない。
大人となり結婚をし家族を持ち子供を育てる段になると、ある程度落ち着いているのだろう。世間に物申すということはないのだろうが、物事の見方が普通ではないように感じられた。
20年以上前の作品だが、今読んでも十分衝撃を受けるエッセイ集だ。