老神介護 


 2025.3.13      超高度な文明の神が地球にホームステイする 【老神介護】


                     
老神介護 (角川文庫) [ 劉慈欣 ]
評価:3
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■ヒトコト感想
作者の作品は、相変わらず強烈なインパクトのあるSF短編集ばかりだ。「老神介護」と続いていくのが「人類不要」であり、「彼女の眼を連れて」の続きが「地球大砲」ということになる。「白亜紀往事」は作者の短編集「円」の中で描かれていた恐竜文明の話を少し進化させたような物語だ。

どの短編もどこかしら「三体」で使われた要素がある。科学的な根拠がどうだとかはあるのだが、物語を信じさせる強烈な説得力があるのは間違いない。神が宇宙からやってきて、地球の最低限の生活を今後の標準とする。そのために、地球人たちは最低限の生活の水準を上げるために必死となる。普通の人では考えつかないようなぶっとんだ設定であることは間違いない。

■ストーリー
突如現れた宇宙船から、次々地球に降り立った神は、みすぼらしい姿でこう言った。「わしらは神じゃ。この世界を創造した労に報いると思って、食べものを少し分けてくれんかの」。神文明は老年期に入り、宇宙船の生態環境は著しく悪化。神は地球で暮らすことを望んでいた。国連事務総長はこの老神たちを扶養するのは人類の責任だと認め、二十億柱の神は、十五億の家庭に受け入れられることに。

しかし、ほどなく両者の蜜月は終わりを告げた――。「老神介護」神文明が去って3年。地球で、もっとも裕福な13人がプロの殺し屋を雇ってまで殺したいのは、もっとも貧しい3人だった。社会的資産液化委員会から人類文明救済を依頼された殺し屋は、兄文明からやってきた男から、別の地球で起こった驚愕の事態を訊かされる。「扶養人類」蟻と恐竜、二つの世界の共存関係は2000年以上続いてきた。

恐竜世界の複雑なシステムは、蟻連邦によって支えられていたが、蟻世界は恐竜世界に核兵器廃棄を要求、拒絶されるとすべての蟻はストライキに突入した。「白亜紀往事」僕が休暇を取る条件は、眼を連れていくこと

■感想
「老神介護」で宇宙から神たちが移住してくる。その際に地球人の家にホームステイするというのが面白い。神という概念というよりは地球よりもはるかに高度な文明ということで描かれており、その後の「地球扶養」につながることになる。

宇宙の高度な文明をもつ者たちが地球にやってくる。それはなぜかというと…。別の惑星ではひとりの人間が世界の富の99%をもつというとんでもない状態になり、呼吸することすらできない世界となっている。この思考にいたり物語化するのは、常人では考えつかない流れだ。

「彼女の眼を連れてって」は、技術が進歩し他人の目を連れていくことで、他人に自分と同じ景色を見せることができるという物語だ。ポイントとなるのは、どこかにいるであろう彼女がどこにいるのか。宇宙のどこかにいると思われた彼女は、実は地球のコアにいた。

調査のためにコアに入り込んだは良いが抜け出せなくなり、一生コアにいることになる。それが、のちの「地球大砲」で描かれた地球に穴を掘り、中国から南極に続くトンネルを掘るというとんでもない計画に関連してくる。

地球の中心を突っ切るトンネルを掘り、そこに飛び降りると、地球の裏側に到達できる。この調査のために地球のコアに残されたのは、実は地球のトンネルの開発を指揮した男の娘だった。現実的にあり得る話ではないのだが、地球を貫くトンネルを掘り、移動で使うだけでなく、最終的にはそれを砲身として大砲をイメージして宇宙へ飛び出すための砲台にするなんてのは普通は考えつかない。

技術的にできるかどうかというよりも、その発想がすばらしいのは間違いない。

未知の世界を経験できるのは間違いない。



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