リペアラー [ 大沢在昌 ]
評価:3
大沢在昌おすすめランキング
■ヒトコト感想
大沢在昌のハードボイルド長編。発端は、ノンフィクションの小説家が知り合いから調査を依頼されたことから始まる。40年前、ある六本木のマンションの屋上に数カ月経過したと思われたホームレスの死体が存在した。その死体を調べることから始める作家のミヤビとイラストレータの想一の物語だ。過去の死体の話を調べるために、マンションの住人やオーナーの情報を調べていく。
その過程で、大きな秘密にぶち当たることになる。かなり後半まで謎は明かされない。その状態でかなりの高権力からの妨害が入る。ラストはSF満点のオチとなるのだが…。ラストはよいとして、調査に入るきっかけがあまりに的外れというか…。依頼者が知りたいことに対しての依頼内容がかけ離れすぎているのが後から思うと気になる部分だ。
■ストーリー
40年前、ビルの屋上で見つかった〈行旅死亡人〉は何者か――?イラストレーターの想一は、高校からの友人でノンフィクション作家のミヤビから、彼女が受けた依頼の手伝いを頼まれる。それは40年前、六本木のビルの屋上で遺体となって見つかった男性を調べることだった。当時の警察は事件性なしと判断し、身許不明の「行旅死亡人」として処理。依頼人の正体も目的も分からぬまま、想一とミヤビは、男性が何者で、なぜひっそりとそこで亡くなったのかを調査し始める。かつてのビルの住人に当たるうち、2人はある奇妙な人物に行き着くが――。
■感想
40年前にマンションの屋上に身元不明のホームレスの死体があった。当時は事件性のない死体と思われていたのだが…。ミヤビと想一が調査していく中で、別の謎が浮かび上がってくる。古い話を調査するので、少しの手がかりでも大事にしなければならない。
マンションに昔から住んでいた人たちに話を聞いて回る。ミヤビがマンションに入居したいということをきっかけとしてオーナーに話を聞こうとする。ハードボイルドとは程遠い流れではあるが、中盤以降に急にきな臭い展開となる。
オーナー絡みの話となると口をつぐんだり、オーナー自身が写真を嫌がったりする。ここから急激に変化していき、調査している想一や飲食を手広くやっている望月に強い圧力がかかることになる。何か大きなタブーに触れたのか。
この段階では何が大きな問題なのかまったくわからない。アメリカが関係しており、日本の国家の安全にかかわる大きな出来事だという流れとなっている。ミヤビたちに依頼をしたのが、実はオーナーの娘だと判明したあたりから、オーナーに秘密があるとわかり始める。
後半から突然SFの要素が強くなる。実はオーナーはタイムリープしていた。リペアラーという名で呼ばれ、一定数の存在が確認されているらしい。特徴的なのは、自分の身体がタイムリープするので、本来の年齢に合わない時代にタイムリープすることがあるらしい。
本人の意識はすべて正常な状態で、体と意識が別の時代の自分に乗り移る感じだ。確かに新しい形のタイムリープではあるが、非常に混乱しそうだ。調査のきっかけとなった屋上の死体も、オーナーのものだというのは容易に想像できた。
新しい形のタイムリープと言えるのだろう。