何故エリーズは語らなかったのか? 


 2025.10.28      リアルな体はバーチャルの足かせでしかない 【何故エリーズは語らなかったのか?】


                     
何故エリーズは語らなかったのか? Why Didn’t Elise Speak? (講談社タイガ) [ 森博嗣 ]
評価:3
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■ヒトコト感想
グアトシリーズ。人工知能が当たり前の世界で、バーチャルの世界がリアルを超えている世界だ。リアルは不要と思われるほど、バーチャルが主要となっている。今回はエリーズ博士が行方不明となり、それをグアトとロジたちが調査するという流れだ。エリーズ博士は何かしら画期的なソフトウェアを開発し、それを手に入れたい者たちから狙われていたらしい。

この画期的なソフトというのがラストで判明する。すべてにおいて恵まれた世界であり、バーチャルだけで生きることが可能な世界。リアルな体が足かせになるような状態であったとして、世界を変えるようなソフトというのはいったいどういったものなのか。すべてのデータを改ざんして証拠を隠滅するというすさまじい技術も見せている。

■ストーリー
「エリーズ・ギャロワ博士が会いたがっている」人工知能たちがグアトにそんな噂を教えてくれた。面談を求められるような理由に心当たりはなかった。ほどなくして彼女は行方不明になってしまう。ギャロワ博士は、ヴァーチャル世界に資する研究を続け、ついに「究極の恵み」とまで賞される成果をあげたという。博士は自らの意志で姿を消したのか、それとも事件に巻き込まれてしまったのか。

■感想
究極の恵みを開発したエリーズ博士が行方不明となった。グアトに会いたいと言っていた人物がリアルでもバーチャルでも行方がわからなくなっている。序盤ではエリーズ博士の開発したソフトを手に入れたい何かしらの大きな組織が暗躍していると思われていたのだが…。

オーロラなどの人工知能が当たり前に動いている世界では、なんでもかんでもシミュレーションで確率を出してしまう。エリーズ博士のリアルな体は死体となってロボットに運ばれたという情報もありながらグアトたちは調査を行う。

このシリーズの流れでは、リアルな体は不要という流れがある。リアルな体は足かせでしかなく、バーチャルですべてが事足りるということだ。バーチャルがメインとなる世界でエリーズが開発したソフトは一体どんな効果があるのか。

例のごとくマガタ博士も登場してくるが、分野が違うということでエリーズに対しては興味をもっていないということだ。エリーズのリアルな体の殺人事件騒ぎや、バーチャルでの痕跡がまったく残らないなど、特殊な状況が続いていく。

最後の最後でエリーズが開発したソフトの真相が明らかとなる。リアルとバーチャルの違いは死しかない。バーチャルでも死を再現するためのソフトをエリーズが作っていたということだ。すでに行き着くところまで行くと、死を求めるようになるようだ。

リアルの身体もかなり延命が可能となる。バーチャルの世界ではなおさらで、バーチャルでの死というのは生きていたこと自体をすべて消去することらしい。分散化の世界であちこちにデータが分散している中で、すべてを消去するのはかなり難しいことだろう。

行き着くところまで行き着いた感じだ。



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