蜜蜂と遠雷 豪華版【Blu-ray】 [ 松岡茉優 ]
評価:3
■ヒトコト感想
恩田陸原作小説の実写化。若手のピアノコンクールが開催され、そこに情熱を傾ける若手ピアニストたちの物語。エリートピアニストのマサル。元天才少女であり7年間表舞台にでていなかった栄伝。そして、天才少年の塵。そこに苦労人であり楽器店で勤務しながらコンクールに挑戦した高島。この四人が物語の中心となっている。
強烈なのはやはりピアノに対する情熱だ。四六時中ピアノを弾き続けるような者たち。そんな天才の中で、ひとりの凡人である高島が入っている。2次予選で落選した高島は、その情熱だけでは天才にはかなわないということを見せつけられている。最初の雰囲気では、塵が圧倒的な実力があるかと思われたのだが…。コンクールに優勝したのは割と意外な人物だった。
■ストーリー
3年に一度開催され、若手ピアニストの登竜門として注目される芳ヶ江国際ピアノコンクール。かつて天才少女と言われ、その将来を嘱望されるも、7年前、母親の死をきっかけに表舞台から消えていた栄伝亜夜は、再起をかけ、自分の音を探しに、コンクールに挑む。そしてそこで、3人のコンテスタントと出会う。岩手の楽器店で働くかたわら、夢を諦めず、“生活者の音楽"を掲げ、年齢制限ギリギリで最後のコンクールに挑むサラリーマン奏者、高島明石。
幼少の頃、亜夜と共にピアノを学び、いまは名門ジュリアード音楽院に在学し、人気実力を兼ね備えた優勝大本命のマサル・カルロス・レヴィ・アナトール。そして、今は亡き“ピアノの神様"の推薦状を持ち、突如として現れた謎の少年、風間塵。国際コンクールの熾烈な戦いを通し、ライバルたちと互いに刺激し合う中で、亜夜は、かつての自分の音楽と向き合うことになる。果たして亜夜は、まだ音楽の神様に愛されているのか。そして、最後に勝つのは誰か?
■感想
若手ピアニストたちがしのぎを削るコンクール。ピアノで生活するのはかなり難しい。ほとんどの者がピアノの教師になるか、趣味でピアノをする程度となる。早々とコンクールで負けて去る者もいる。一方であきらめず、来年もチャレンジすると意気込む者もいる。
印象的なのはラストチャンスと意気込む高島だ。普通の楽器店に勤務するサラリーマンが、生活に根差した音を目指す。音大生のように恵まれた環境ではなく、時間制限がある中でのピアノ練習。2次審査で落ちてしまうのが厳しい現実を表している。
主役は栄伝なのだろう。過去のトラウマがフラッシュバックする中で、同じシチュエーションで本戦での審査が行われる。塵は自由奔放でその才能と、ひたすら無音のピアノで練習する努力も示している。ただ塵の場合は努力をまるで楽しいことのように楽しみながら行っている。
そのため、塵は悲壮感がない。崖っぷちの高島のような苦悩もない。塵と同じく天才ではあるが、マサルはエリートとしてのプライドとプレッシャーがある。栄伝は過去のトラウマとの闘いがある。
本戦ではオーケストラに合わせることになる。ここで曲者の指揮者とどのような関係性を描くかがポイントだ。マサルは納得できないフルートの音出しについて何度もやり直しを行うが、指揮者に否定されてしまう。
栄伝は幼少期の悪夢と同じシチュエーションなので、ピアノを強く弾くことができなくなっている。マサルのこだわりはすさまじい。そして、本番ではそのマサルのこだわりがフルートにも伝わりぴったりとズレることなくうまくいくのが良い。
ピアニストのコンテストに懸ける強烈な思いが伝わってくる物語だ。