共犯の畔 


 2025.6.6      選挙は信じられないほど不可思議で複雑だ 【共犯の畔】


                     
共犯の畔 [ 真保裕一 ]
評価:3
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■ヒトコト感想
冒頭、政治家の秘書が監禁される事件が起きる。その秘書を助けるために政治家が犯人を説得するのだが…。物語は33年前の巨大ダム建設に関する政治的な事件に関わってくる。選挙やそれに関わるボランティア、そして関係者たち。選挙を手伝う地元のボランティアたちは無償で手伝いを行う。そこに参加する人々の理由は様々。巨大ダムの利権がらみでの賛成派や反対派がいる。

結果として巨大ダムが作られているという流れがある。地元の政治家は巨大ダムを争点として争い、勝利したとしても巨大な権力により不正が作り上げられ、自然と辞職の流れとされる場合がある。この政治的な策略を暴くために33年後に若者たちが動き出す。強烈なインパクトのある物語だ。

■ストーリー
代議士事務所立て籠もり事件が発生、犯人2人が逮捕されるが、完全黙秘を貫く。彼らが沈黙を続ける真の理由とは? ラストで明かされる驚愕のメッセージに読者は慟哭する! 巨大ダムに象徴される日本の病巣を抉り出す白熱のサスペンス巨編!!

■感想
山奥の村に巨大なダムを作る計画がある。本当にダムが必要かはおいておいて、ダムの巨大な利権に群がる有象無象がある。住民の中でもダムの反対派と賛成派がいる。自分の故郷がダムの底に沈むのを良しとするのか。それとも、新天地で新たに仕事を探すのか。

ダムが建設されない場合は、今のまま、同じ場所でずっと未来永劫住み続けるのか。それぞれの事情で賛成反対があるのは当然だろう。それを代表する政治家が選挙で審判を受ける。まっとうな選挙の中で、ひとつの失敗がその後に大きな影響を及ぼすことになる。

冒頭での政治家秘書の監禁事件。それは33年前の事件に関係していた。選挙には様々な人々が関係するというのがよくわかる。特に会計責任者はものすごく神経を使う仕事となる。少しでも不正な経理があれば、それはつまり政治家への不信となる。

特に選挙活動については基本的にはすべてボランティアで賄わなければならない。唯一、給料を払えるのはウグイス嬢や運転手だけ。その運転手の人員に対してのミスが、のちに会計責任者の自殺へとつながり、政治家の辞任にまで発展する。非常に恐ろしい世界だと感じた。

その当時、ひとつの不正と思われる領収書があり、そこから政治家の辞任にまでつながる。そんな過去の謎の出来事を、現代の若者たちが一丸となり調査する。その手法がすさまじいインパクトがある。あえて大きな事件を起こし、世間に注目させ、警察の取り調べに対しては徹底して黙秘を貫く。

そして、黒幕の政治家が動き出し、各方面に圧力をかけ始めたときに、真実を暴露する。実は監禁事件自体が、すべて仕組まれていたものだったというのはかなりの衝撃だ。

非常に前振りというか、過去の巨大ダム絡みの流れが長い物語だ。



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