暦のしずく 


 2026.3.8      講釈師が打ち首獄門になった理由 【暦のしずく】


                     
暦のしずく [ 沢木耕太郎 ]
評価:3
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■ヒトコト感想
「馬場文耕」を描いたノンフィクションの歴史小説。冒頭で馬場文耕が講釈師でありながら、獄門という厳しい処罰を受けたと語れている。一部は史実に基づいているのだろう。死刑の刑罰の中で、罪が重い順でいくと、そのトップに君臨する獄門。なぜ講釈師がこのように獄門を言い渡されたのかが語られている。

作中では、作者の解説的な流れもあるが、それは歴史的な事実を補足するような形なので、非常に読みやすくためになる展開だ。講釈師でありながら、剣の腕もすさまじい。どこか歴史剣豪モノのような雰囲気もある。多人数の刺客に囲まれた際に、どのようにして切り抜けるのか。文耕は最後まで剣の勝負で負けることはないのだが、お上から獄門という厳しい処罰を受けて死ぬことになる。

■ストーリー
宝暦八年、獄門を申し渡された講釈師・馬場文耕。長屋暮らしの文耕は、かつてなぜ刀を捨て、そして獄門に処されることになったのか? 謎に包まれた実在の人物、文耕の生涯を端正な文章と魅力的な登場人物で描き出す。沢木耕太郎、初にして堂々たる時代小説!

■感想
冒頭からただの講釈師である馬場文耕が獄門の刑に処されたということが描かれている。よっぽど大物、例えば将軍についての噂話を講釈として民衆に触れ回ったことで、将軍の逆鱗に触れたのかと思いきや…。

物語は、文耕が講釈師として人気を得ていく流れも描かれている。太平記などのオーソドックスな軍記物を中心に語っていたのが、娯楽性や劇性を高めた講談へ移行していき、たちまち人気になっていく様も描かれている。最初はなじみの遊女を助けるための講談が評判となり、それ専門になっていく。

講釈師としてだけでなく、文耕が剣の達人ということが描かれている。作中では文耕の講談により名誉を傷つけられ自死した者の身内に狙われることになる。相手は剣をもち、文耕は丸腰ではあるが、そこから鮮やかな手並みで相手の脇差を奪い、着物を切り裂いている。

それだけで文耕が剣の達人であるということがわかる。その後も、様々な相手と戦うのだが、すべて文耕は勝利している。終盤では7人の刺客に狙われた際にも、機転をきかせて危機を切り抜けている。

農民たちが高い年貢の取り立てに苦しんでおり、お上に直訴しようとする。そこで法を犯してまで行動にでる農民。それを補助する文耕。大名は文耕が邪魔になり排除しようとするのだが…。最後まで文耕を排除することはできないが…。

まっとうな手段でお上に逆らう思想を流布したという罪で獄門に処されることになるのだが…。いくら剣の達人であっても、お上の裁判を受けて死刑の判決がでた場合は、それを避けることはできない。ラストではフィクション的に文耕は生きているかも?という終わり方をしている。

文献が少ない人物のノンフィクションは、作者の想像の部分が増えてくるので、ドラマチックな展開となる。



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