小鳥とリムジン 


 2026.9.5      理夢人という理想的な男 【小鳥とリムジン】


                     
小鳥とリムジン (一般書 471) [ 小川糸 ]
評価:3
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■ヒトコト感想
物語は小鳥という女性を中心にすすんでいく。18歳で施設を出た小鳥は、コジマという父親かもしれないという男性の介護をすることになる。非常にハードな状況からスタートするのだが、小鳥は何事も前向きにとらえている。生活が保障される代わりにボケ始めたコジマさんの下の世話までしなければならない。

そこからコジマさんの死と、幼少期の小鳥が経験した虐待の状況が描かれている。そこから、小鳥は極端に自分の身体を守ることに力を注ぐのだが、運命の人と出会う。弁当屋の名前がリムジン弁当で、そこの店主が理夢人というのは当て字にしても強烈だ。後半の小鳥の幸せな雰囲気はどこか、作者の「蝶々喃々」に似ているかもしれない。

■ストーリー
傷口に、おいしいものがしみていく苦しい環境にあり、人を信頼することをあきらめ、自分の人生すらもあきらめていた主人公が、かけがえのない人たちと出逢うことで自らの心と体を取り戻していく。主人公の小鳥のささやかな楽しみは、仕事の帰り道に灯りのともったお弁当屋さんから漂うおいしそうなにおいをかぐこと。人と接することが得意ではない小鳥は、心惹かれつつも長らくお店のドアを開けられずにいた。

十年ほど前、家族に恵まれず、生きる術も住む場所もなかった18歳の小鳥に、病を得た自身の介護を仕事として依頼してきたのは、小鳥の父親だというコジマさんだった。病によって衰え、コミュニケーションが難しくなっていくのと反比例するように、少しずつ心が通いあうようにもなっていたが、ある日出勤すると、コジマさんは眠るように亡くなっていた。その帰り、小鳥は初めてお弁当屋さんのドアを開ける――

■感想
小鳥は見ず知らずの、もしかしたら父親かもしれないコジマさんの介護をすることになる。非常に身勝手な依頼にも関わらず小鳥はコジマさんの面倒を見ることになる。序盤では、それまで小鳥がどのような人生を過ごしてきたのかは描かれていないので、なんでこんなことをするのか?という疑問が終始つきまとった。

そこから、小鳥がコジマさんの下の世話をしつつ、リムジン弁当との出会いがある。いくら生活が保障されるとしても、ボケ始めた見ず知らずの老人が、突然、介護してくれとやってくるのは納得いかないことなのだろう。

小鳥の幼少期の虐待が描かれている。肉体的というよりも精神的な虐待だ。母親が常に男を連れ込んでおり、母親のSEXを常にまじかで感じることになる。さらには、成長した自分自身が男に襲われる危険性もある。虐待であることは間違いない。

そして、そんな経験をした小鳥からすると、男と肉体関係をもつことは非常に困難になるのは当然のことだろう。何かそういったチャンスがあったとしても、小鳥としては自然と相手と深くかかわることを避けるようになる。幼少期のトラウマは強固なものだ。

リムジン弁当の店主である理夢人と親密になる。この理夢人というキャラが、絵にかいたような優しく思いやりのある人物だ。「蝶々喃々」で登場した男にも同じような雰囲気を感じたのだが…。30歳まで処女である小鳥の理解者であり、最初の相手としては、理夢人以外はありえないのだろう。

理夢人が作るおいしそうな料理の数々がある。これは作者の作品ではたびたび登場してくる、手の込んだ昔ながら手法で作るおいしそうな料理だ。そんな料理に囲まれた小鳥は幸せの絶頂にあるのかもしれない。

作者らしい作品だ。



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