蝶々喃々 


 2023.4.2      純和風な大人の恋愛物語 【蝶々喃々】

                     

評価:3
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■ヒトコト感想
アンティーク着物店を営む栞の日々の生活を描く。複雑な家庭環境であり、アンティーク着物店の特殊さが物語のポイントなのだろう。ものすごくゆっくりとした時間の流れを感じる。男女の恋愛模様がメインではあるが、ドロドロとした雰囲気はない。栞が恋する相手は春一郎という男で妻子があるため、栞からすると不倫状態となっている。

不倫でのゴタゴタがあるわけではなく、単純に栞は恋愛を楽しんでいる。春一郎が父親に似ているということで栞は惹かれていく。落ち着いた雰囲気の中で、おいしいものを食べる描写や美しいものを鑑賞する描写が続く。栞が落ち着いているので、周りで何か大きな出来事が起きたとしても、栞はどっしりと構えているような感じだ。

■ストーリー
ちょうちょうなんなん(喋々喃々)=男女が楽しげに小声で語り合うさま。東京・谷中でアンティークきもの店を営む栞。ある日店に父親に似た声をした男性客が訪れる―少しずつふくらむ恋心や家族との葛藤が、季節の移ろいやおいしいものの描写を交え丁寧に描かれる。

■感想
アンティークの着物を扱う栞。常に着物を着るような生活なので、イメージするのは純和風な雰囲気だ。物語はイメージ通り、落ち着いた栞の生活が描かれている。春一郎と知り合い、そこから情熱的な恋愛がスタートするわけではない。

序盤はプラトニックな恋愛となり、一緒に食事をしたり季節を感じる散歩をしたりもする。大人の恋愛というか、不倫という雰囲気を感じさせない流れとなっている。栞は過去に恋をした男がおり、別れてからもその男のことを忘れられない状態となっている。

栞と妹との関係も複雑だ。栞の彼を妹がうばったような記述があり、ふたりの関係の難しさが描かれている。そこから、栞の家族との関係性が描かれている。近所には栞のことを良くしてくれる金持ちのおじいさんがおり、その人とのちょっとしたデートなどもある。

すべてが大人というか、落ち着いた雰囲気がある。春一郎の妻や子供の話がいっさいでず、栞と春一郎は今後どうなっていくかなんてのは描かれることはない。未来のない恋愛という雰囲気を感じさせない物語だ。

タイトルどおり、男女が楽し気に小声で語り合うということになる。大人の恋愛でありながら、肝心な部分は覆い隠している。栞が手料理を振る舞い、それを春一郎がおいしそうに食べる。どことなく作者の「食堂かたつむり」に近い感じがした。

作者の作品を読むと、作中に登場してくる料理を食べたくなる。純和風な雰囲気の中で、多少重い話が登場してくる。元彼が実は重い病に犯されており、死ぬ前に栞に手紙を残していた場面は確かに感動できる流れだ。

落ち着いた大人の恋愛物語だ。



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