気の毒ばたらき きたきた捕物帖 (三) [ 宮部みゆき ]
評価:3
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■ヒトコト感想
「きたきた捕物帖」の第3弾。今回も北一と喜多次が事件を解決する。本作では2つの中編が収録されている。北一の親分であった千吉の跡を継いだ万作・おたま夫婦の文庫屋が何者かに放火され焼失してしまう。放火の容疑者として名前が上がったのは、北一が良く知る女中のお染だった。北一はなぜお染が放火をしたのかの調査をすることになるのだが…。
もう一つの中編は30年前の貸本屋村田屋治兵衛の妻の殺害事件を解き明かす物語となっている。30年も前の事件なので、困難を極めるのだが喜多次と忍者犬であるシロとブチ、そして異常に記憶力のあるおでこの協力により、謎を解きあかすことになる。犯人を見つけておしまい、とならないのがこのシリーズの特徴だろう。
■ストーリー
万作・おたま夫婦が継いだ千吉親分の文庫屋が、放火により火事になった――。下手人は、台所女中のお染だというが、親分の家でお染に世話になった北一は信じられず、その疑いを晴らすべく奔走する。さらに、焼け出された人たちが過ごす仮住まいでも事件が起きていた……。そんななか迎えた新しい年。北一は、ある事をきっかけに、三十年近く前に起きた、貸本屋・村田屋治兵衛の妻殺害事件の真相を明らかにしようと決意する。
もちろん、湯屋の釜焚きをしている相棒・喜多次の協力は欠かせない。二人は、この難事件を解決することができるのか。「ぼんくら」シリーズ(講談社文庫)の人気キャラクター「おでこ」も、二人を助けてくれる存在として登場。
■感想
文庫屋の放火事件の物語については、お染が放火にいたった理由と、放火にまぎれて焼け出された家から住人が持ち出した物を盗むという「気の毒ばたらき」についてが描かれている。焼け出された人々の仮住まいに「気の毒にねぇ」と近づいて大事なものを盗む。
江戸時代の火事は火が出た建物の周りの建物も、それ以上に延焼させないために建物を打ち壊す。その結果、家を失った人たちは仮住まいを余儀なくされる。まさか焼け出された人が大金を持っているなんてのは想像できないことなのだが…。
お染が放火にいたる経緯は強烈だ。相変わらずだが、悪意ある存在がすさまじい。万作よりもおたまがお染めに対して行った行動に問題があった。北一が知った時にはすでにお染は行方不明となっていた。北一からするとお染が放火するなんて、信じられないことではあったのだが…。
お染の子供に対する思いと、おたまがその場限りの都合の良い言葉をお染に伝えたことによるトラブル。お染の水死体が発見された際に、追い詰められたお染の思いが判明することになる。
30年前の事件を紐解く流れは喜多次が北一を鍛える流れがある。過去の事件を調べていく中で、スリの男にこっぴどく痛めつけられることになる北一。そこから喜多次に鍛えられ、成長していく北一。過去の事件の解明については、進んでいくのだが真の黒幕がすでに死んでいるということで、真実を被害者に伝えることを避ける北一。
すべてが丸く収まるというよりは、こうするのが一番良いという手段を選んでいるのがポイントかもしれない。
ある意味、救いのない物語だ。