賢人たちのインテリジェンス (ポプラ新書 266) [ 佐藤優 ]
評価:3
佐藤優おすすめランキング
■ヒトコト感想
作者である佐藤優が様々な知識人たちと対談を行い、それを収録した本作。12人もの知識人たちとの対談は様々なジャンルにわたる。いくつか興味深い対談があった。ロボット発明家である吉藤オリィはかなりぶっ飛んでいる。自分が引きこもりであり、人間とコミュニケーションをとるのが難しいからとロボットを研究しロボットとのコミュニケーションを選ぼうとする。普通ではない人だからこそ、その研究成果が注目されたのだろうか。
それとも研究成果がすばらしく、あとから特殊な人だということがわかったのだろうか。そのほか、陰謀論と情報リテラシーについても興味深かった。陰謀論をとなえる人については、何を言っても陰謀と言われてしまうと話にならないような気がした。
■ストーリー
強く、しなやかな知性で、激動の時代を迎え撃て!時代の本質を見抜くために、「常識に囚われない知性」が最良の武器になる―「知の巨人」佐藤優が、未来を切り拓く「自由な知」を持つ賢人たちと語り合う。変わりゆくこれからの生き方を探る12の対話集。1魔王亡きあとの生存戦略 吉藤オリィ(分身ロボット発明家)2多様性って本当に寛容ですか? 大屋雄裕(法学者)3続・結婚論――家庭内を戦場にしないために―― 萱野稔人(哲学者)4若者たちが集う昨今の社会運動事情 富永京子(社会学者)5「頭」ではなく「心=身体」の満足を 泉谷閑示(精神科医)
■感想
個々の対談は短く非常にサラリと読み終わってしまう。自分に興味のある分野だとか、強烈な衝撃を受けたりしない限りは、すっぱりと頭の中から読んだ内容は消え失せてしまうかもしれない。結婚論について対談する場面があったのだが…。
正直どんなことを対談していたのか覚えていない。そこまで衝撃的な内容ではなく、ごく当たり前の内容だと感じたからだろう。作者はあとがきで自分の人生の残り時間を考え、優先度をつけて仕事をすることにしたらしい。その中で最優先となったのが教育なのだが…。それが本作に活かされているのだろう。
それぞれの分野でプロフェッショナルな人物たちとの対談。もはやオリンピックは商業的な目的以外には何もないと語る。確かに真夏の暑い時期にスポーツの祭典を行うことに必然性はない。アメリカのスーパーボウルとの時期を被らないようにするためだけに夏に行っている。
巨額の放映権料や、スポンサー収入。ヒーローが生まれた瞬間に、ものすごい利権が発生する。もはやオリンピックがなくなったとしても大部分の人は悲しまないのかもしれない。
精神科医が人間関係で振り回されないためにはどうすれば良いかを対談している。わかってはいるが、できないことなのだろう。誰もが精神科医の言うことをまっとうに行うことができれば、逆に精神科医は必要ないのだろう。それぞれの性格の問題で行動できない人もいる。
この手の対談については、対談している者同士は共感できたとしても、レベルがはるかに落ちる一般の読者には、どこまでが刺さるのだろうか。別世界の話として架空の物語と理解してしまう可能性すらある。
バリエーションが豊かなことは間違いない。