犬と生きる 


 2025.8.18      飼い犬にデレデレする作者は意外だ 【犬と生きる】


                     
犬と生きる [ 辻仁成 ]
評価:3
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■ヒトコト感想
辻仁成のエッセイ集。最近「不屈」で、フランスでの生活の日常を描いたエッセイを読んだばかりだ。そこから最新の作者の状況が描かれている。子供が大学へ入学するタイミングで家を出るので、その前に犬を飼うということが赤裸々に語られている。犬をまったく飼ったことのない作者が、犬との出会いからスタートしている。

三四郎と名付けた犬との生活。フランスでの犬事情も含まれている。奥さんと離婚し子供が独立した60代の男が犬と共に生活する。少しの間犬を預ける際にも、かなりショックを受けていたのでその依存度がすさまじいのが想像できた。孤独に対して耐性があるはずの作者であっても、犬の癒し効果を認めずにはいられないのだろう。

■ストーリー
ぼくは孤独上等と思って生きているけれど、犬は彼らにしかないある種の能力で、そういう意固地な人間の孤独と思い込む悪い部分を中和させてくれる。三四郎の存在によって、孤独の居心地が不意によくなるのだ。

■感想
マルチな能力を発揮している作者が、孤独に備えて犬を飼うことになる。様々なエッセイから、かなり個人主義の生活には強いような印象の作者だが…。犬を飼い、その一挙手一投足にデレデレするとは思わなかった。

若いころの作者であれば絶対に選ばない選択肢なのだろう。犬を飼う生活というのは、それだけで何かと制限される部分がある。さらには作者はフランス生活なので、日本とは違う部分もあるのだろう。驚くほどフランスは犬を飼う人に対しては優しいというのが伝わってきた。

フランスの道路が汚いので、犬の散歩に気を遣うだとか。フランスではカフェやレストランで犬を連れていくのもOKだとか、ホテルでも犬がOKのところが多いなどある。そして、驚きなのは犬にもパスポートがあって、正式にブリーダーのサインがないと有効ではないということだ。

このパスポートがあることで、日本からフランスに入る際には三四郎には専用のパスポートが必要ということだ。日本に長期間滞在する必要がある作者が、三四郎を預ける際の悲しみ具合がすさまじいのに驚いた。

息子に対しては自立しろと、割と引き離すような対応をしている。子供の成長を促すためなのだろうが…。離婚して子供も離れるとなると完全にひとりとなる作者。フランスの地で生活する覚悟と、恐らくだが作者の中では終わりを見据えているというのもあるのだろう。

後半のエッセイでは、日本でのコンサートは引退するというような記述がある。完全に音楽活動を辞めるわけではないのだろうが…。今後は作家としての活動が主軸となるのだろう。

犬にデレデレとなる作者も意外だ。



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