春に散る スタンダード・エディション [ 瀬々敬久 ]
評価:3
■ヒトコト感想
原作はすでに読んでいる。原作者の沢木耕太郎はボクシング系の小説をいくつか書いているが、本作に関してはどこか「あしたのジョー」的な雰囲気がある。引退した元ボクサーが若いボクサーを鍛えて育てる。内容的には単純化するとそんな感じだ。昔のボクサー仲間たちと共同生活をして若いボクサーを育てる。ボクサーの翔吾はステレオタイプな粗暴な若者でわかりやすい。
シングルマザーの家庭で育ち、自暴自棄となっていたところ、広岡に挑みかかり、見事にクロスカウンターでやられてしまう。原作小説ではもう少し深堀されていたが、ボクサーの壁のナンバーワンである減量での悩みが一切登場しない。出演しているボクサー役たちの仕上がり具合に驚かされるだろう。
■ストーリー
40年ぶりに故郷の地を踏んだ、元ボクサーの広岡仁一。引退を決めたアメリカで事業を興し成功を収めたが、不完全燃焼の心を抱えて突然帰国したのだ。所属していたジムを訪れ、かつて広岡に恋心を抱き、今は亡き父から会長の座を継いだ令子に挨拶した広岡は、今はすっかり落ちぶれたという二人の仲間に会いに行く。そんな広岡の前に不公平な判定負けに怒り、1度はボクシングをやめた黒木翔吾が現れ、広岡の指導を受けたいと懇願する。
そこへ広岡の姪の佳菜子も加わり不思議な共同生活が始まった。やがて翔吾をチャンピオンにするという広岡の情熱は、翔吾はもちろん一度は夢を諦めた周りの人々を巻き込んでいく。果たして、それぞれが命をかけて始めた新たな人生の行方は―?
■感想
元有名ボクサーがアメリカから日本に帰ってくる。白髪頭の広岡は、昔のジムを訪ね懐かしむ。まずここで驚いたのは元ボクサーとして片岡鶴太郎が演じている部分だ。確かにプロライセンスをもっておりぴったりの配役だが、映画に出演しているとは思わなかった。
不完全燃焼を抱えた老人たちが共同生活をして若いボクサーを育てる。落ちぶれて酒びたりとなった仲間もいれば、小さな子供にボクシングを教えることに生きがいをおぼえる仲間もいる。三者三葉のその後の生活があるのが良いのだろう。
ビンボー、孤児、どうしようもない不良、なんてイメージの若者が改心してボクシングに打ち込むのが昔のボクサー漫画だろう。本作では、シングルマザーの家庭で育ち、不良な雰囲気はあるが、まぁ、普通の若者だ。広岡たちのいうことをよく聞いて地道に練習をする。
ライバルのボクサーたちもそこまで嫌な奴ではなく、さわやかにボクシングに打ち込んでいる。広岡の心臓の持病が悪化し、いつ倒れるかわからない。そして翔吾に訪れた壁は、目の病気だった。。。
ラストではフェザー級のチャンピオンとの世界戦となる。ここで驚きなのは演じる俳優たちの仕上がり具合だ。おそらくはフェザー級の体重に合わせているのだろう。チャンピオンの方が身長が高いのでがりがりの状態となっている。翔吾の方は痩せてはいるが、肩の筋肉の盛り上がりが尋常ではない。
翔吾を演じた横浜流星がプロテストに合格したようだが、ボクサーとしての動きは十分できているように見えた。ラストの展開はある程度想定できる流れではある。
何より俳優たちの身体の仕上がり具合が強烈だ。