源家物語 


 2025.11.1      頼朝と義経だけが源家ではない 【源家物語】


                     
源家物語 [ 真保裕一 ]
評価:3
真保裕一おすすめランキング
■ヒトコト感想
平家物語は存在するが、源家物語がないのはなぜなのか。平氏と同じように源氏にも大きな物語があった。自分の中のイメージとしては、源氏と言えば鎌倉幕府を開いた源頼朝や義経だが、本作ではそれよりも前の時代。平清盛よりも前に源義家のことがメインに語られている。この時代の源氏の動きについてはほとんど知らなかったので、非常に興味深かった。

源氏の名を遺すために平氏の娘を嫁にとり、頼義は成り上がっていく。頼義の息子である義家が多くの戦いを潜り抜けた中で、成功と挫折をくり返していく。強烈なのは陸奥での戦いの数々だ。雪深い中で兵の数では勝っていたとしても、柵に閉じこもる敵を倒すためにどのような策略を練るのか。強烈なインパクトのある流れだ。

■ストーリー
平家物語の中に「源家」という呼称が出てくるのはあまり知られていない。源氏にもかつて、平清盛一族と並び称されるほど栄華を誇った家門があった。「多くの罪なき者を殺す」と世に怖れられた、八幡太郎こと源義家の一族である。義家は父・頼義とともに奥州の厳しい戦いを乗り越え東国を平定、武者としての名声と武功を高めていく。その力を怖れた朝廷は、義家一門を陥れるための謀略を進める。

義家に反発する弟の賀茂二郎義綱と結び義家を罠にかけ、一族の血で血を洗う暗闘により源家は悲劇の結末を迎える。だが義家の三男・義忠は、源家の栄光を取り戻すべく平正盛の娘を妻に迎え、嫡男の烏帽子親を務めていた。その嫡男こそ、平清盛の養父となる忠盛だった。実は義家の母も平家の娘だった。義家の父・頼義は一門を興隆させるため平家の力を借りていたのだ……。

■感想
源氏物語ではなく源家物語というのがポイントだ。源義家がメインとなっている。武士としての能力は高いとしても政治的な立ち回りが苦手。諸国から武威を恐れられている人物であるらしい。義家の父親の代から陸奥での戦いが繰り広げられていた。

一族のすべてを預かる存在なので、謀反した者たちを成敗するという側面もあるが、周りの面子を立てる行動もとらなければならない。東北の雪国での戦いなので、時間をかけると雪により足止めをされたりもする。

メインは親子での陸奥での戦いだ。ほんの些細な行き違いで東北の豪族同士の争いが起きる。この時、東北全体を預かる者として義家の判断が重要になる。どちらにつくのかということや、調停に対する報告などもあり、それでいて、戦いに対しても部下を大事にして勝つ必要がある。

相手が大群に恐れをなして柵にこもり続けた戦いでは、周りを囲んで兵糧攻めにする。相手の兵糧がつきて女子供が逃げ出してきた際には、その後の遺恨を残さないために皆殺しにするという鬼の一面がある。

兄弟での権力争いもある。本人はそのつもりはなくとも、弟が攻撃してきたりもする。兄弟や親せきと言えども、権力争いは激しくなる。源家の棟梁である義家であっても、ライバルは存在する。妬み嫉みがある中で、自分たちの地位と名誉を守ることを重視する。

ここから先には頼朝が登場してくるのだが、その前に源家として義家という偉大な存在があったことに驚いた。歴史的な人物ではあるが、自分の中ではあまり知らない人物だったので、非常に勉強になった。

義家という人物が理解できた気がした。



おしらせ

感想は下記メールアドレスへ
(*を@に変換)
*yahoo.co.jp