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 2026.5.29      読む順番で結末が変わる仕掛けがすばらしい 【I】


                     
I [ 道尾秀介 ]
評価:3
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■ヒトコト感想
「ゲオスミン」「ペトリコール」というふたつの短編が収録された本作。さかさまにしないと読めないようになっており、作者の「N」と似たような仕掛けとなっている。どちらの短編から読むかで結末が変わる仕掛けとなっている。この仕掛けをネタバレすることは禁止されているので、詳しくは書かない。読む前にどちらから読むかでバッドエンドとハッピーエンドに分かれると書かれている。

同じ短編を読む順番でそこまで結末を変えることができるのか?という疑問があったのだが…。見事にその仕掛けにやられてしまった。自分は「ペトリコール」を先に読んだ。この前振りがあったので、「ゲオスミン」を読んでいる時にも、逆であればどんな結末になるのか?なんてことを想像しながら読んでしまった。

■ストーリー
ホームレスの野宮と知り合った田釜は、元刑事だという野宮が語る幾つかの話に耳を傾ける。田釜も、野宮も、何かを抱えていた。(「ゲオスミン」)硝子職人の律子と暮らす高校生の夕歌は、世間を騒がせた一家殺害事件の生き残りだった。彼女には誰にも言えない秘密があり……。(「ペトリコール」)

■感想
「ペトリコール」は雨の降り始めの独特な臭いのことを言うようだ。雨が降ることにより浮き上がるアスファルトやホコリの臭い。誰もが嗅いだことのある臭いだろう。「ゲオスミン」は逆に雨が上がった後の臭いのようだ。

それをどこかで聞いたことがあったので、自分の場合は最初に「ペトリコール」を読むことにした。ネタバレするので詳しくは書けないのだが…。かなり読んでいる間中に頭を使うことは間違いない。登場してくるキーワードがかなり緻密であり、時系列が重要であることがよくわかる作品だ。

「ペトリコール」は高校生・夕歌の物語だ。一家殺害事件の唯一の生き残りであり、ガラス職人の律子に引き取られて穏やかに生活していたのだが…。実は夕歌には大きな秘密があった。メインストーリー的には先に読もうが後に読もうが関係はない。

夕歌の姉についてもすでに死んでいるので、その死因がどうなのか?というのが多少ゲオスミンと関連する程度だ。ただ、この作品の中で夕歌の行動が大きなカギとなる。時系列の違いにより、夕歌の行動の意味合いが大きく変わってくるのがポイントだろう。

「ゲオスミン」は娘を失った田釜の物語だ。基本的には田釜と同じく娘を失った元刑事の野宮の復讐物語となっている。それぞれが恨みに思う人物に復讐すると、すぐに警察にかぎつけられてしまう。なので、お互いの復讐したい相手を交換することで、復讐を達成しようと考えるのだが…。

復讐の原因が読む順番により変わってくる。そして、復讐をするかしないかの決断には「ペトリコール」の夕歌の行動が関係してくる。時系列がズレることでの因果関係を巧みに操っているのが秀逸だ。

もう一度読みたくなるのは間違いない。



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