残照の頂 続・山女日記 


 2023.2.16      女性目線での登山の物語 【残照の頂 続・山女日記】

                     
残照の頂 続・山女日記 [ 湊かなえ ]
評価:3
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■ヒトコト感想
「山女日記」と同様に登山に関する女性の物語となっている。様々な悩みや葛藤を抱えた女性が登山を通して自分を見つめなおす。登山が身近なレbジャーになったとしても危険が伴うことは変わらない。印象的なのは、大事なひとり娘が山岳ガイドになると言った際に、猛反対した母親の物語だ。

娘からするとなぜそこまで反対されたのかが不明で、自分の山岳ガイドとしての実力を試されているように、母親と一緒に山に登る。父親が登山での事故で死んだことから、娘の登山ガイドに反対する。父親の思い出のリュックを使う母親など、ちょっとした仕掛けが良い。心の中の思いをかみしめながら登山をする。それぞれが何を考え山に登るのか。独特な雰囲気のある短編集だ。

■ストーリー
「通過したつらい日々は、つらかったと認めればいい。たいへんだったと口に出せばいい。そこを乗り越えた自分を素直にねぎらえばいい。そこから、次の目的地を探せばいい。」後立山連峰亡き夫に対して後悔を抱く女性と、人生の選択に迷いが生じる会社員。北アルプス表銀座失踪した仲間と、ともに登る仲間への、特別な思いを胸に秘める音大生。立山・剱岳娘の夢を応援できない母親と、母を説得したい山岳部の女子大生。

武奈ヶ岳・安達太良山コロナ禍、三〇年ぶりの登山をかつての山仲間と報告し合う女性たち。……日々の思いを噛み締めながら、一歩一歩、山を登る女たち。頂から見える景色は、過去の自分を肯定し、未来へ導いてくれる。

■感想
作者の独特な語り口が良い。女性目線の作品であり、ちょっとくどいように感じるのだが、女性の気持ちを表しているのだろう。登山ガイドが自分の学生時代の登山サークルの仲間だった。同行している者に気を使い、自分がガイドと知り合いということを隠しながら、当時の思い出を回想しつつ登山を続ける。

登山にそれほど馴染みはないのだが、印象的な場面は多々ある。登山の筋肉を作るのが大変で、気軽に登山できる人とあらかじめ予定を組まないと参加できない者の違いなども描かれている。

コロナ渦での久々の再会で登山をする山仲間の女たち。それぞれの人生がある。何が正解といのはない。人生の選択に正解はない。迷った末に、周りがどうなたのかが気になってしまう場合もある。厳しい登山では体力を考えながら登る必要がある。

強烈なのは、一度座ってしまうと、次に立ち上がる力がないパターンだ。そこまで疲れ切ってしまうのは衝撃的だ。食料をこまめに食べつつ登らなければ、途端に動けなくなるというのはすさまじい。自分の中ではちょっとしたハイキングの長い版のようなイメージだった。

山男と登山をしない女のカップルはうまくいくが、登山しない男と山が好きな女のカップルはうまくいかない。確かに一理あるかもしれない。登山となると日程を組んでの行程となる。女友達は登山好きな男を手に入れ自分はそれができていない。

うらやましいと思いながらも、相手には別の悩みがあった。隣の芝生は青く見えるというのがあるのだろう。登山を趣味とする女性は、同じ趣味の男性を見つけるのが手っ取り早いのかもしれないが…。

女性目線での登山の物語だ。



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