四人組がいた。 


 2022.4.12      世間に対する皮肉が詰まった老人たちの短編集 【四人組がいた。】

                     
四人組がいた。 (文春文庫) [ 高村薫 ]
評価:2.5
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■ヒトコト感想
山奥の山村に住む、元村長、元助役、郵便局長、おばさんの四人がメインの物語だ。正直よくわからない。それぞれの短編で四人組が活躍する。四つ足の動物たちが登場し、ファンタジーあふれる展開になることもある。ブタを飼育していた小学生とその学校の教師や、役場の職員、女優など、様々な者たちが山村を訪ねひと騒動が起こる。

四人組の巧みな話術に飲み込まれているというのもあるのだろう。わけのわからない状況のまま帰っていく者もいる。村の奥で芸術家が熱気球を作る。それはまるで生命をもつような動きをし、いつまでたってもヘリウムガスが抜けることはない。なんだかヘンテコな連作短編集であることは間違いない。

■ストーリー
とくに名物もない山奥の山村に、ヒマを持て余して集まる元村長、元助役、郵便局長、そしてキクエ小母さんの老人四人組。村は、いつものように平穏のはすが……。気球を使ったモダンアーティスト、若い保険外交員の娘、小学校の生徒、町史編纂する役場の職員、テレビクルーに女優……そしてたくさんの動物たちが、村でひと騒動を起こしていく。四人は、AKBを見ながら過疎を愁い、ネットショッピングをしながら限界集落へと思いをはせる。「日本の田舎」から今を描く、黒い笑いに満ちた短編連作。

■感想
ファンタジーあふれる作品だ。人里離れた山村で、老人四人が主人公の物語となっている。老人たちに保険を売りつけようとする保険外交員の娘に対して、あれこれ注文を付けるのだが、その娘がさらに上を行く鈍感具合がすさまじい。

どんな返しをされたとしても、そこから保険につなげるのがすさまじい。ここまでのメンタルの強さがないと保険外交員はやっていけないのだろう。老人たちと娘の会話が面白さのポイントだ。ファンタジー要素が少ない現実感のあるちょっとしたコメディ短編となっている。

そのほかの短編はかなりふざけたトーンとなっている。AKB48ならぬ、タヌキたちがアイドルとなるTNB48など。四つ足を当たり前のように人間と同じように登場してくる。そして、小学生たちが飼育し最後に自分たちで食べようと考えていたブタが行方不明となった流れも良い。

老人たちはいかにも自分たちで食べてしまった、というような雰囲気をだしながら、小学生と教師をけむにまいている。都市と地方の差別や、老人差別なども皮肉として描いているのが良い。

時事ネタあり、風俗や政治ネタも豊富だ。それをファンタジーあふれる展開にしているのが良い。主人公の老人たちに作者の言いたいことを代弁させているような流れだ。ブラックジョーク満載で、老人が常に暇だと世間が思ってることへの反論もある。

作者の他作品を読んでいると、あまりのギャップに驚くだろう。自分も作者の重厚な作品のファンなので、すんなりとは入りこめなかった。森見登美彦などが本作を描いたと言われればあっさりと納得してしまうだろう。

意外な作品であることは間違いない。



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