よみがえる戦略的思考 


 2024.6.26      ロシアとウクライナの戦争の裏側 【よみがえる戦略的思考】


                     
よみがえる戦略的思考 ウクライナ戦争で見る「動的体系」 (朝日新書885) [ 佐藤優 ]
評価:3
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■ヒトコト感想
戦略的思考とあるが、メインはロシアとウクライナの戦争について描かれている。国の外交としては価値の理論だけではダメで、力の理論や利益の理論が必要だという。ロシアとウクライナの戦争では、全面的にロシアが悪いのは事実であるとしても、そのまま明確にウクライナを支援するのは良くないとのこと。

日本は地政学的にロシアや中国に囲まれているため、ロシアと全面的に敵対するのは良くないらしい。ヨーロッパの一部の国もロシアの資源により成り立つ部分もあるため、敵対することを避けている。正義を貫くのは建前としてあるとしても、国を運営する立場の者たちは総合的に考えて立ち回る必要があるらしい。ただ、その理論でいくと、力を持つ国は何をやってもよいように思えてしまった。

■ストーリー
長期戦となったウクライナ戦で国際政治は大きく塗り替えられる。「第三次世界大戦は始まっている」との見方もある中、現下の危機を克服するために戦略的思考を取り戻すことが期待されている。世界のパワーバランスと日本の生き残り戦略をインテリジェンスの第一人者が説く。

■感想
ロシアとウクライナの戦争が始まった当初は、すぐに終わると思われていた。ロシアの圧倒的な勝利だろう、という流れが意外なほど長く続いている。その要因としては、アメリカやイギリスがウクライナに対して武器を供給し続けているからだ。

本作ではこのウクライナとロシアの戦争について、一般的な報道では気づかない部分について語られている。まず驚いたのは、アメリカとロシアはある程度線引きをしており、このラインは超えないというのがアメリカにも認識としてあるということだ。これが管理された戦争ということに驚かずにはいられない。

バイデン政権はウクライナを支援し続けるしかない。ウクライナが勝つことはありえないが、このままウクライナが負けてしまうと、自分たちの支援が無駄だったと思われるため、明確に負けてほしくない。かといってウクライナが勝つために支援することはしない。

ロシアの領土に攻撃ができない程度の武器をアメリカはウクライナに供給し続ける。ここまで管理された戦争だということに驚いた。日本の立場としては、正義を貫くためにウクライナを支援しているのだが、本当は裏ではロシアとの関係を継続している。

当然ながら、ウクライナ国内とロシア国内では戦争の意味合いが異なっている。ロシアにはロシアの正義があり、ウクライナには自国を守るための正義がある。日本はウクライナに支援できるような武器はなく、対ロシアとしてはあまりウクライナ寄りとはみられていない。

そのことを有利として考え、様々な事業はロシアと継続している。さらには、安倍元首相が殺害された際、プーチンから手紙が来たりとロシアとの関係性はそこまで悪くない。一番は戦争が早く終わることだが、後に引けない状況になっている。

ロシアとウクライナの戦争の結末がものすごく気になる作品だ。



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