2023.9.4 行きたくはならない旅エッセイ 【忘れないよ!ベトナム】
忘れないよ!ヴェトナム/幻冬舎/田口ランディ
評価:3
■ヒトコト感想
田口ランディのベトナム旅行記。「沢木耕太郎」や「たかのてるこ」などで東南アジアの旅エッセイはいくつか読んだことがあるが、作者だけの個性としては、圧倒的にベトナムに対する文句が強いことだ。ベトナムに着いた当初は、ベトナム人のしつこさに嫌気がさして罵詈雑言のオンパレードとなっている。さらには宿泊するホテルの文句から始まり、ぼったくりの件など、ひたすら文句が続く。
このテンションであれば、早々に日本に帰るのかと思いきや…。メコンデルタの旅で認識を新たにしている。ただ、全編通して文句が多い。詐欺とまではいかないが、騙された感じになるとそれに文句を言う。ブロークンな英語で現地人に文句をまくしたてる。かなりパワフルだ。
■ストーリー
ある日、友人がお茶の水の聖橋の上で言った。「ああ、メコン川の夕陽が見たい」。それから一〇年経ち、彼女は本当にヴェトナムで職を見つけた。さらに一年後、まさか私まで旅行記を書くためにヴェトナムを訪れるとは…。不思議な運命と新鮮な出会い。自由に、気ままに、時には危険も辞さない珍道中の数々。田口ランディのデビュー作。
■感想
フリーライター時代の田口ランディが、ベトナムへ旅行をする。合間には恐らくは作者が書いたのであろう、出会った人々の似顔絵がある。社会主義国のベトナムで、物価が極度に安い。日本の感覚で言うとかなりカルチャーショックを受けるのだろうが…。
作者はそのあたり、ベトナムに着いた早々に文句のオンパレードとなっている。ベトナム人の押し売りがしつこい、ホテルの部屋に窓がないので陰鬱な気分になる。ぼったくりばかり。なんだかんだとひたすら文句が続いていく。
中盤でメコンデルタに旅へ行くことに決めてから変化がでてくる。外国人だらけのツアーに参加しブロークンな英語で会話をするうちに図太くなったのだろう。ベトナム自体が貧しい国なので、設備が整っているわけではない。
あらかじめ覚悟して行ったとしても、その惨状は我慢できないかもしれない。のちに現地人として親友となるボート漕ぎの女性との出会いも、最初はしつこいということで、ひたすら文句を続けている。ただ、このアグレッシブさと言いたいことを言うバイタリティがあるからこそ、旅を楽しめるのだろう。
ベトナム旅行中に様々な日本人と出会い、同じ部屋に泊まったりもする。かなりアグレッシブで、同じ日本人からしても作者の行動は圧倒されるようだ。旅慣れたバックパッカーまでも引かせるほどの勢いがあるのはすごい。本作を読んだからといってベトナムに行きたいとは思わない。
住環境としては快適ではないのだろう。作者が自由に感じたのは、自分が自由だからだ。ベトナムの現地人たちは社会主義国としての不便さを感じているのだろう。
行きたくならない旅エッセイもめずらしい。
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