中途採用捜査官 下 


 2023.3.23      不正アクセスや株価操作の秘密を暴け 【中途採用捜査官 下】

                     
中途採用捜査官 下 / 佐々木 敏
評価:2.5
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■ヒトコト感想
上巻ではSEから刑事になるための試験の流れなど面白要素があった。下巻となりコンパクト社の犯罪を暴く流れとなるのだが…。急激に面白さがトーンダウンしていった。登場人物たちの会話だけでひたすら事件の概要が説明される。何か特殊なトリックがあるわけでもない。ベストセラーを意図的に作り上げるための仕組みは確かに面白い。

そこから、コンパクト社の犯罪へとつなげる流れがあまりにも平凡すぎる。中途採用捜査官ならではの捜査というのは少ない。何より、キャラたちがちょっとコメディの方に倒れており、物語としてのシリアス感がなくなっている。ヤクザたちがこぞって投資の本を買う理由についても説明がない。伏線と思われた要素が回収されないとモヤモヤしてくる。

■ストーリー
一課より上品、三課より知的、組織犯罪対策部より紳士的。そんな二課の団藤班に配属された結城と恵。現場は結城のかつての勤務先コンパクト社だった。クラッキングが内部の犯行だった場合、社の事情に詳しい結城が秘密兵器になる。そして、結城は令状をもたされかつての上司システム部長の土井に手渡した。

■感想
上巻で不当な解雇を受けた結城が中途採用の刑事となり、再び自分が勤務していたコンパクトに舞い戻る。ある意味、復讐に近いのかもしれない。上巻では中途採用の捜査官になるためのハードルや試験など、少し面白要素があった。

いざ刑事となりコンパクト社の不正アクセスや株価の乱高下を調査するのことになるのだが…。上巻からの流れでヤクザたちが株を買い占めたり、投資の本を買って勉強したり。ヤクザが勉強することに何か大きな謎が隠されているような流れではあったが…。伏線が回収されないまま終わっている。

コンパクト社の問題についてはごちゃごちゃしているが、結局のところ不正会計や株価の操作、そして不正アクセスの自作自演にあったのだろう。作者がIT知識があるのだろう。細かなシステム系のマニアックな内容が語られている。

SQLサーバーやデータベース。ERPなど。ただ、そこに特別感はない。ERPへの不正アクセスについては、もっと特殊な不正アクセスを想像していたのだが、特別なトリックがない。肝の部分でどうにも微妙な感じとなるので、全体的に会話がベースとなってしまっている。

結局は特別なインパクトもなく、コンパクト社の不正アクセス騒動から始まる株価操作が描かれている。結城や恵がそれなりに活躍はしているのだが…。中途採用としての特殊業務はあまりない。コンパクト社の内部を暴くためには結城の元社員という経歴は役にたつ。

ただ、それも社員ならではの目からうろこな特殊なことではない。ITについての細かな情報はあるのだが、トリックがそれに付随しているわけではなく、モヤっとしているのが微妙に感じた。

上巻からの勢いからすると、下巻はかなりトーンダウンしたように思えた。



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