中途採用捜査官 上 


 2023.2.25      IT企業のSEが刑事となる 【中途採用捜査官 上】

                     
中途採用捜査官 上 / 佐々木敏
評価:3
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■ヒトコト感想
IT技術者が特捜員として刑事に転職する物語。序盤は主人公である結城がコンパクト社勤務のSEであったが、クビを切られてしまう。その上、不正アクセス事件の容疑者とされさんざんな目に合う。同じく会計士補として監査法人に勤務していた恵が、男と別れそのまま会社も辞めてしまう。そんな時に捜査二課長である団藤は、コンパクト社の株式の怪しげな動きを捜査するため、結城や恵をスカウトし、特捜官として活躍してもらおうとする。

刑事の中途採用というのは実際にあるのだろう。その際にどのような手続きが必要で、面接でどのようなことを聞かれるのか。フィクションかもしれないが、非常に興味深い。現状ではコンパクト社がどんな犯罪を犯しているかが気になる流れだ。

■ストーリー
コンパクト社勤務の結城はシリコンバレー特派員という朗報にだまされて、上機嫌で出社すると、なんと人事部からの解雇通知。エンジニア解雇は慎重にしなければという会社側の罠だった。夜、自分のアパートに帰った結城は警視庁捜査二課の家宅捜索に出くわす。コンパクト社の不正アクセス事件の容疑者としてノートパソコンを押収され逮補される。

■感想
SEとしてコンパクト社に勤務していた結城がクビを切られる。そのタイミングでコンパクト社に不正アクセス事件が発生し結城は容疑者となるのだが…。無実が証明される。捜査を指揮した団藤は、コンパクト社の秘密を探るためにその手の専門家が必要と考え、結城を特捜官へスカウトしようとする。

全体のトーンが明るくちょっとしたコメディの雰囲気がある。団藤のチームは元マルボウの落ちこぼれ刑事や新人の刑事と結城や恵になるのだろう。ガチの強面刑事、頼りない新人、元SE、元会計士という異色なチームが下巻に活躍するのだろう。

特捜官として採用されるまでの流れと、採用されてから訓練を受けるシーンが良い。普通の警官が行う訓練の中で、柔道や剣道は免除されるらしい。いきなり警部補になれることからも、ある意味中途の強みなのかもしれない。

ただ、特捜官は捜査一課やマルボウに行ったりはしないのだろうが、面接時にはどのような部署でも刑事としてやっていくと答えろというのが良い。刑事になる動機としても、身内が犯罪に巻き込まれたから、なんてのを答えるのが良いなど、あからさまな展開が最高だ。

後半はコンパクト社の犯罪の謎を解き明かす流れとなる。不正アクセスは自作自演なのか?株価の乱高下や、社長が出版した投資の本がバカ売れしているように見えるなど、怪しげな雰囲気がある。それを元マルボウと新人が見当はずれな捜査をしつつ、コンパクト社の株主総会に入り込む。

下巻では結城や恵がそれぞれの専門分野を活かして大活躍するのだろう。全体の軽さがサクサクと読める展開となっている。シリアスなミステリーではないが、逆にそれが良いのだろう。

下巻が楽しみだ。



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