地政学入門 


 2023.8.16      山があることで、他国から攻められない 【地政学入門】

                     
地政学入門 (角川新書) [ 佐藤優 ]
評価:3
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■ヒトコト感想
地政学というものを初めて聞いた。国家間では地理が重要であり、特に山は侵略を防ぐ効果があると語られている。大学の講義をそのまま文章化した本作。地政学として中東やユーラシア大陸、そしてアメリカとの関係などがわかりやすく描かれている。対立が激化する米中やイラン、そしてロシアの問題などを地政学から紐解いている。

最近の事件でジャスミン革命が中東各国に波及する場面がある。その際に、政権が崩壊した国と、政権が維持できた国に違いがある。歴史的な情報として日本で報道された内容とは異なり、裏の部分を解説してくれるのがすばらしい。世界情勢を細かく追いかけていなくとも、作者の作品を読むと、今何が世界で起きているのかがよくわかるのが良い。

■ストーリー
地政学は帝国と結びつくものであり、帝国は国民国家を超える。帝国の礎にはイデオロギーがあり、それは「物語の力」が核となっている。地政学はナチスの公認イデオロギーとなっていたがゆえに封印されていた、危険な「物語」でもある。危うい物語が浸透していくと、世界は知らぬ間に大きな危機を迎えることになる。無批判に受容してはならない政治理論のエッセンスを、国際政治の具体例を基に解説していく珠玉の講義。

対立が激化する米中、イランを筆頭に勢力圏の再編が進む中東、混迷の中央アジア、ブロック化と理念維持の狭間で苦闘するEU、反日と反韓の疑似戦争が続く東アジア。世界はいまだ、グローバルでなくインターナショナルのせめぎあいが中心となっている。帝国化する時代を読み解くには、地政学が大きく、有用な鍵となる。

■感想
地政学と聞いて何を思うのか。地理が政治に大きく影響するというのはわかる。近くの国同士であれば、何かと小競り合いがある。領土問題はもとより海洋資源の取り合いなどもある。その土地に山があると侵略されずらいらしい。

大昔であれば、戦争するにしても山を越えるのは大変だから、というのはわかる。それが現代でも当てはまるのは意外だ。川はそこまで障害とはならない。大空に戦闘機が飛び、ドローンでの無人の攻撃が当たり前になった現代でも山があることで守られる国があるらしい。

日本では報道されていないが、世界的に話題になった事件なども解説されている。自分的にはうっすらとは理解していたが、すべてがヨーロッパが中心となっているので日本は地図上ではヨーロッパからすると遥か東に位置するので極東。

エジプトやイランは中東ということになるらしい。ヨーロッパ中心であっても、イギリスやフランスでは中東に対する扱いが変わるだとか。サウジアラビアが石油の価格をコントロールするのはアメリカのシェールガス開発を妨害するためだとか、知らない情報が盛りだくさんだ。

テロに対する恐れを必要以上にもつことに意味がないらしい。テロが発生するリスクは飛行機が墜落する確率より低い。テロ発生を危惧するならば、外にでて交通事故にあうことを恐れた方が良いらしい。ただ、日本はテロ組織の国が対立する国と連携することで今の裕福さを維持できている。

そのことを理解していれば、テロの標的とされることを避けることはできない。確かに何かを得るためには犠牲が必要なのだろう。都合よくすべての国と仲良く手をつないで、さらに裕福で、なんてことはできないのだろう。

わかりやすく世界情勢を語っているのが良い。



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