2022.11.8 南武線シリーズの最終章 【探偵少女アリサの事件簿 さらば南武線】
探偵少女アリサの事件簿 さらば南武線 [ 東川篤哉 ]
評価:3
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■ヒトコト感想
探偵少女アリサシリーズの最終巻。南武線の武蔵新城、武蔵溝ノ口など自分がなじみのある駅名が登場し、なつかしくなるのはいつものとおり。今回もライトな謎解きが展開されている。殺人事件が起きるが、そのトリックがパントマイムであったりと、拍子抜けするような種明かしが本作の特徴だろう。恨みだとか憎しみとは無縁のライトな事件ばかり。
そもそも小学生女子と三十代のなんでも屋というコンビがおりなすドタバタ劇を楽しむ作品だろう。作者の他作品では野球をテーマとした作品もある。その中のバリエーションのひとつという感じなのだろう。南武線の駅ごとの位置づけも、オマケ的な要素としてある。シリーズとしてのポリシーを最後まで貫いている作品だ。
■ストーリー
勤め先のスーパーをクビになり、地元・武蔵新庄で「なんでもタチバナ」をはじめた橘良太。最近は名探偵一家の主である綾羅木孝三郎の娘・有紗のお守役を仰せつかっている。しかしこの有紗が曲者で、幼いながら名探偵気取り。実際、推理力は父親をしのぎ、数々の難事件を解決してきた。そんなある日、依頼先に出かけた良太が密室殺人に遭遇してしまい……。溝ノ口&南武線を舞台に凸凹コンビが大活躍!王道のユーモアミステリー、堂々の完結
■感想
良太と有紗の凸凹コンビの探偵もの。良太が便利屋として事件に巻き込まれ、それに同行している有紗が事件を解決するという流れになっている。「便利屋、クリスマスに慌てる」では、密室殺人が発生するが、そのトリックがなんとも単純というか…。
窓ガラスが割れているはずだとか割れてないとか、そのあたりが焦点となる。そして、オチは…。まさかのパントマイムとなる。密室殺人というと大げさなトリックを予想してしまうのだが、そうではなく割と単純なトリックとなっているのが本シリーズの特徴だろう。
有紗が小学生女子というのもポイントだ。良太が同じく黒髪長髪の小学生女子をボディーガードしていたが、突如として消え去ってしまう。近くには帽子をかぶった男の子しかいない。何か事件が起きるというよりは、良太の便利屋としての仕事でのゴタゴタが描かれている。
叙述トリックといえば良いのだろうか。長髪黒髪の少女という手がかりだけで探していたが、実はヘアドネーションのため髪を伸ばしていた小学生男子だったというオチだ。有紗が小学生だからこそ成立する作品だ。
本作でシリーズが終わるということで、ラストは有紗が南武線沿線から離れるという流れとなっている。ただ単に名探偵の母親の元に家族で移住するというだけなのだが…。自分が本作の舞台である武蔵新城周辺に住んでいたので、出てくる地名がいちいち懐かしく感じてしまった。
駅ごとでの役割というか、オシャレな街のイメージがついた武蔵小杉など、地元民がうなずくような展開が良い。特別南武線だからというのはないのだが、ライトなミステリーでありよく知る場所が舞台となっているので楽しめた。
また新たなシリーズが展開されることだろう。
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