魂手形 三島屋変調百物語七之続 


 2022.3.3      火の怪物の爪を食べて火の怪物になる 【魂手形 三島屋変調百物語七之続】

                     
魂手形 三島屋変調百物語七之続(7) [ 宮部みゆき ]
評価:2.5
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■ヒトコト感想
三島屋変調百物語シリーズ。今回も不思議な話を聞くという流れは変わらない。ただ、富次郎のちょっとした恋愛関連の話まである。印象的なのは、火消しの話だ。時代的に火事が起きると密集した木造の家はあっという間に燃え広がってしまう。火消しの太鼓には特殊な能力があり、実は火消しの太鼓により火事の火が吸収されるという流れだ。その他にも、富次郎が密に恋心を抱く団子屋の娘の両親の物語が語られている。

どれも摩訶不思議な話であり、現実的なオチがつくわけではない。老人がお化けについて語るなどもある。このシリーズはおかちから始まり、現在の富次郎が聞き役となる。物語として変化していくのは聞き手側の変化なのだろう。

■ストーリー
嘘も真実も善きも悪しきも、すべてが詰まった江戸怪談の新骨頂!江戸は神田の三島屋で行われている変わり百物語。美丈夫の勤番武士は国元の不思議な〈火消し〉の話を、団子屋の屋台を営む娘は母親の念を、そして鯔背な老人は木賃宿に泊まったお化けについて、富次郎に語り捨てる。

■感想
富次郎が聞き役となり、不思議な話が語られる。武士が語るのは故郷の話であり、そこでは火の元の注意喚起のために夜に太鼓をたたいて火の用心を叫ぶ。なぜ太鼓なのかというのは、ただ音で注意を引くためかと思いきや…。太鼓にはしっかりとその役目があった。

実は太鼓には火を吸収する能力があった。その元となるのは、火の怪物の爪が使われていた。驚きなのは、その火の怪物が死ぬ間際に、選ばれた村人のひとりが怪物の体の一部を食べることで、次代の火の怪物となるという部分だ。かなり特殊な流れだ。

富次郎が密に思いを寄せる団子屋の娘の生い立ちが語られる。その前段として、娘がひとりでやっている団子屋がなぜここまでやってこれているのかが語られている。高級な砂糖が入っていた麻袋を洗うことを名目として砂糖屋から袋を手に入れ、洗った水を煮詰めて砂糖として利用している。

砂糖屋からすると袋をキレイに洗ってもらい、さらには修繕までしてくれるということで団子屋へ袋を預ける。団子屋はただで高級な砂糖水を手に入れることができるという流れだ。

木賃宿のお化けは、割とオーソドックスなお化けの物語となっている。元々はおかちが不思議な話を聞くという流れであったが、それを引き継いだ形の富次郎が新たに話を聞く。おかちは話を聞きながら相手に何かしら変化が訪れたのだが…。富次郎が話を聞く意味がほとんど見いだせていない。

物語として富次郎に何か変化があるのだろう。火の怪物については、その出自もそうだが、動物の肝臓を食べて自分の肝臓の病気を治すことと同じ流れということなのだろう。

シリーズとしてのインパクトは弱い。



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