太陽の蓋


 2023.9.14    原発事故当時の官邸内部【太陽の蓋】

                     
太陽の蓋 [ 北村有起哉 ]
評価:3

■ヒトコト感想
東日本大震災での原発の騒動を描いた作品。同様な作品では「Fukushima50」がある。これは原発内部の現場作業員の動きがメインに描かれていた。本作は官邸内部の動きと、その時の報道の在り方がメインとなっている。地震が発生し、原発に異常があるとわかった際の混乱。官邸内部での原発の責任者の無責任な発言。技術者たちの呑気に見える発言。

ベントするのは、世界に前例のないことであり、それを今からやろうとしている衝撃。原発の施設が爆発した際に、頭を抱える技術者。危機管理の中枢である官邸内部は、まさにすべてにおいて後手後手であったのがわかる。民間企業である東電に対して命をかけてでも収束させろと言う総理。当時の緊迫感が伝わってきた。

■ストーリー
東日本大震災~福島原発事故が起きた3月11日からの5日間。原発事故の真相を追う新聞記者をキーパーソンとし、当時菅直人政権であった官邸内、さらに東京や福島で暮らす市井の人の姿を対比させて描く。菅内閣の政治家は全て実名で登場させ、原発事故の経過や対応を事実に沿って丹念に追う。情報が錯そうする中、極度の緊張感にあった人間ドラマを描き、官邸内部のリアルな様子を浮かび上がらせる。原発と共に生きて来た福島の人々の葛藤、事故発生によって翻弄されるマスコミや東京に暮らす人々を切り取ることで原発と日本人の姿を俯瞰的に捉えている。

■感想
見終わった感想としては、免許教習所の教習ビデオだとか、セキュリティ事故を防ぐための企業の研修ビデオのような雰囲気を感じた。その時何が起きていたのか。結果論としては、日本は存在している。

運の要素もあったのかもしれないが、仮に燃料棒を冷やすことができなかった場合、四号機のプール内にある水が全て抜けてしまった場合。東京を含めたエリアの大多数が、人が住めない場所になっていた可能性もある。そうなると、首都を大阪などに移転して日本は生存していたのかもしれないが…。

原発の真相を追いかける新聞記者がメインとなっている。政府が情報を隠しているため、どのようにして情報収集するのか。元東電の技術者に情報を聞き、東京が人の住めない場所になる恐怖を感じる。官邸のごたごたはすさまじい。

危機管理室の指揮官が現場に向かうのは是か非か。情報がまったく得られない状態というのはありえない。テレビのニュースで初めて官邸が知るというのはすさまじい状況だ。原発の建屋が爆発する映像を初めて見る官邸の人々は強烈すぎるインパクトがある。

官邸が機能しないまま、東電の一部から福島撤退の情報がでたりもする。これは強烈だ。仮に東電が撤退を決断したとしたら、それは日本の終わりを意味する。現場は撤退なんてことは一切考えていなかったらしい。東電の本店が先走った結果なのかもしれない。

東電は民間だとはいえ、半分公務員のようなものだろう。偶然の要素があるにせよ、そこから、奇跡的に復活したのはすばらしい。もし、官邸がもう少しうまくやっていたら、結果は変わっていたのだろうか。

別の意味でリアルだ。



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