2021.5.17 当時、福島第一原発で何が起きていたのか【FUKUSHIMA 50】
Fukushima 50[ 佐藤浩市 ]
評価:3.5
■ヒトコト感想
衝撃的な作品だ。東日本大震災が発生した直後、福島第一原発で何が起こっていたのか。リアルタイムにニュースを見ており、関連するような小説を読んだことがあるのでなんとなく内容は理解していた。それでも映像として見せられると衝撃がすさまじい。電源喪失から東電本店でのやりとりまで、緊迫感にあふれている。政府や本店の対応に怒り狂う現場責任者の吉田所長。
なんとかして原発を安定させようと必死になり決死隊までも投入していたとは驚きだ。現場の社員たちは死を覚悟しての行動なのだろう。そんな現場を無視した本店や政府の対応というのは、怒りがわいてくる。2号機が安定したのはもはや奇跡なのかもしれない。一歩間違えたら、関東全域が人が住めない場所になっていた可能性もあるのだろう。
■ストーリー
2011年3月11日午後2時46分。東日本大震災発生。福島第一原発を襲う、史上最大の危機─原発内で戦い続けた50人の作業員たち。本当は何が起きていたのか?何が真実か?マグニチュード9.0、最大震度7という巨大地震が起こした想定外の大津波が、福島第一原子力発電所(イチエフ)を襲う。浸水により全電源を喪失したイチエフは、原子炉を冷やせない状況に陥った。
このままではメルトダウンにより想像を絶する被害をもたらす。1・2号機当直長の伊崎ら現場作業員は、原発内に残り原子炉の制御に奔走する。全体指揮を執る吉田所長は部下たちを鼓舞しながらも、状況を把握しきれていない本店や官邸からの指示に怒りをあらわにする。しかし、現場の奮闘もむなしく事態は悪化の一途をたどり、近隣の人々は避難を余儀なくされてしまう。
官邸は、最悪の場合、被害範囲は東京を含む半径250㎞、その対象人口は約5,000万人にのぼると試算。それは東日本の壊滅を意味していた。残された方法は“ベント"。いまだ世界で実施されたことのないこの手段は、作業員たちが体一つで原子炉内に突入し行う手作業。外部と遮断され何の情報もない中、ついに作戦は始まった。皆、避難所に残した家族を心配しながら―
■感想
福島第一で何が起きていたのか。地震直後は電源を喪失したとしても自家発電で電力が供給されていた。それが、地震後の大津波により発電機が故障し全電源を喪失した。その瞬間の現場の混乱はすさまじい。東電の本店に対して指示を求めたり、電源車を求めてもうまくいかない。
現場の混乱ぶりがよくわかるのは、到着した電源車の電源の交流と直流が異なっているため使えないだとか。。メルトダウンを起こす可能性を危惧し、一刻も早く電源復旧が必要な時の混乱ぶりがすさまじく伝わってきた。
強烈なのは、政府と東電との関係だ。政府内でも混乱しており、原子力保安院の担当者が文系だからわからないと言ったり…。東電側でも社長や会長が出張中で不在であり、内部が混乱していることがよくわかる。
現場では事態を改善しようと必死に行動しているのだが、本店や政府が茶々を入れて邪魔をしているように描かれている。挙句の果てには、総理大臣が現場に来るということで、それにより、さらに現場の混乱に拍車をかけることになる。現場判断で危機をのりきったという描かれ方をしている。
2号機の暴走を止めることができなければ、関東一円が住むことのできない場所になる危険性がある。最後まで現場に残った者たちは、死を覚悟していたのだろう。2号機がなぜ安定したかはわからない、という描かれ方だ。当時、リアルタイムにテレビを見ていた者としては、裏での激しいやりとりと危険な状況にあったことを初めて知った。
社員たちは決死隊をつのり、死を覚悟して活動していたのだろう。本作を日本以外の国の人にも見てもらいたい。家族や地域の人々の混乱具合もリアルに描かれている。
緊迫感あふれる展開はすばらしい。
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