砂に埋もれる犬 


 2022.4.19      貧困が貧困を生む。DQN再生産だ 【砂に埋もれる犬】

                     
砂に埋もれる犬 [ 桐野夏生 ]
評価:3
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■ヒトコト感想
貧困とネグレクトの物語。育児放棄した母親のもとで育った少年・優真。食べるものがなく、コンビニの廃棄弁当をもらう生活までしている。母親が男と遊び歩いている中で、幼い弟とふたり、その日、食べるものすらないという過酷な生活をしている。小学校にも通わせてもらえず、ネグレクト状態となる。

そこから児相に送られ、最終的にはコンビニ経営をする目加田の里子となる。育児放棄された子供というのは、一般的な常識を知らない状態となる。お年玉も知らず、風呂に入ることや歯を磨くことも知らない。そして、他者に対する接し方もわからない。単純に教育を受けないというのはどういったことになるのか。思春期を迎えた少年の難しさが描かれている。

■ストーリー
貧困と虐待の連鎖――。母親という牢獄から脱け出した少年は、女たちへの憎悪を加速させた。ジャンルを超えて文芸界をリードする著者の新たな傑作予定調和を打ち砕く圧倒的リアリズム!小学校にも通わせてもらえず、日々の食事もままならない生活を送る優真。母親の亜紀は刹那的な欲望しか満たそうとせず、同棲相手の男に媚びるばかりだ。そんな最悪な環境のなか、優真が虐待を受けているのではないかと手を差し伸べるコンビニ店主が現れる――。ネグレクトによって家族からの愛を受けぬまま思春期を迎えた少年の魂は、どこへ向かうのか。その乾いた心の在りようを物語に昇華させた傑作長編小説。

■感想
母親は付き合っている男と遊び歩き、家には子供ふたりが放置される。学校にも行かず日々の食べる物にも苦労する生活を送る優真。それぞれに事情はあるにせよ、母親の刹那的な行動の数々が心に残る。その日、その瞬間さえよければよいと考える。

子供をお荷物としか思わない。子供を捨てて男の家に転がり込み、男に寄生して生活する。その母親が出来上がったのは、そもそもは祖母の責任でもある。貧困の連鎖というか、貧困が貧困を生むというのは事実なのだろう。DQN再生産の仕組みがわかる物語だ。

優真は母親の元を離れ里子に出される。そこで学校生活や日常生活を送るのだが…。ネグレクトを受け続けた子供はそもそも一般常識や教育がないため、異常な状態となる。やはり教育は必要だと感じずにはいられない。風呂に入る理由や歯を磨く必要性を理解できず、おとしだまの存在も知らない。

人の気持ちを理解することや、他人との距離感についても学ぶことはない。学校生活やあたりまえの食事をとれな生活であれば、それもやむを得ないのだろうか。衝撃的な子供だ。

貧困の実情がリアルに描かれている。実の母親の死すら何も感じないほど、親に恨みを持つ親子。実の息子がどこで何をしているかをまったく気にならない。想像力の欠如というのか、それとも未来を見通す力がないのか。このままの生活をしていたら将来どうなるのかなどは考えないのだろう。

優真の里親となった目加田は、優真の13歳にしては常識を知らないことに驚く。優真の行動の数々を読んでいると危うすぎてハラハラドキドキとしてくる。

リアルすぎる貧困の日常が恐ろしくなる。



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