2023.8.13 嘘にまみれたトリカブト 【栞と嘘の季節】
栞と嘘の季節 [ 米澤穂信 ]
評価:3
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■ヒトコト感想
「本と鍵の季節」の続編。今回も松倉と堀川が活躍する。連作短編の形の本作。トリカブトをラミレートした栞が見つかり、何者かがトリカブトを人に使おうとしているとわかる。誰が栞を作ったのか。どれだけの数の栞が作られ、ばらまかれているのかを松倉と堀川が調査する。校内でもトリカブトが栽培されているなど、かなり特殊な環境ではある。
松倉と堀川のキャラは相変わらず高校生離れした大人っぽさがある。今回は芸能人ばりの美貌をもつ瀬野が関わってくる。トリカブトの栞が切り札という考え方で持ち歩かれる。何かあれば、いつでも人を殺すことができる道具を自分が持っていることが重要なのだろう。警察ざたスレスレの物語であることは間違いない。
■ストーリー
猛毒の栞をめぐる、幾重もの嘘。高校で図書委員を務める堀川次郎と松倉詩門。ある放課後、図書室の返却本の中に押し花の栞が挟まっているのに気づく。小さくかわいらしいその花は――猛毒のトリカブトだった。持ち主を捜す中で、ふたりは校舎裏でトリカブトが栽培されているのを発見する。そして、ついに男性教師が中毒で救急搬送されてしまった。誰が教師を殺そうとしたのか。次は誰が狙われるのか……。「その栞は自分のものだ」と嘘をついて近づいてきた同学年の女子・瀬野とともに、ふたりは真相を追う。
■感想
松倉と堀川が図書委員を務める。図書委員の仕事をくそ真面目にやるのはある意味特殊なように思えた。松倉と堀川それぞれのキャラは前作である程度紹介されているので問題ない。ただ、松倉のキャラだけは常に違和感がある。イケメンであるがちょっととっつきにくい。
瀬野という美女が登場するのだが、甘い話は一切ない。高校が舞台ではあるが、ほとんど恋愛要素がないのは特殊なのだろう。松倉も堀川も客観的に見ると超合理主義のように思えてくる。
栞の関係者を調べると、瀬野がある友達と作ったということがわかる。瀬野とその友達には当時は切り札が必要だったのだろう。松倉と堀川は瀬野から話を聞くのだが、そこには嘘が混じっている。瀬野だけでなく実は松倉も嘘をついていた。
嘘まみれではあるが、それは物語の根幹ではなく、堀川が指摘して気づく程度の寄り道の情報だ。トリカブトの栞がどれくらいばらまかれているのか。そして、実際にトリカブトを使った事件が起きたと思われたため、松倉と堀川は焦り始める。
学校内で噂が立ち始めると、それは栞を持つ者たちの想定した展開なのだろう。学校内で口に入れるモノは、恨まれている人は毒を盛られる可能性がある。そんな噂が立つと、想像で気分が悪くなる者もいる。そして、心当たりがある人も同じようになる。
松倉たちが警察の力を借りずに最後まで解決している。少し不満なのは、栞を作るに至った動機が最後まではっきりと語られていないことだ。瀬野以外の栞を持つ者たちはどのような理由で栞を手にしたかったのか。。
松倉たちの思考の超合理的な考え方は高校生離れしている。
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