本と鍵の季節 


 2020.1.6      冴えすぎる高校生コンビ 【本と鍵の季節】

                     
本と鍵の季節 / 米沢穂信
評価:3
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■ヒトコト感想
堀川と松倉。ふたりの男子高校生が日常の謎を解く物語。物語は連作短編形式で、序盤では松倉や堀川のふたりが冴えた推理を展開する部分を読者に印象つけようとしている。高校生ではあるが遊びに夢中になるパリピタイプではない。ふたりとも図書委員であり本を読むことやじっくりと考察を続けることを好む。

松倉は背が高くイケメンで目立つのだが、浮かれた様子は一切ない。松倉と堀川のキャラ付けが終わると、メインである松倉の父親の話となる。父親が残した宝物のありかを推理する堀川と松倉。どこか歯切れの悪い松倉であり、それに気づく堀川。ラストでは堀川が全てを解き明かす。高校生とは思えない冴えすぎな推理が連発される。日常の謎をこうも鮮やかに効率的に解き明かすのはやりすぎでは?と思ってしまった。

■ストーリー
堀川次郎は高校二年の図書委員。利用者のほとんどいない放課後の図書室で、同じく図書委員の松倉詩門(しもん)と当番を務めている。背が高く顔もいい松倉は目立つ存在で、快活でよく笑う一方、ほどよく皮肉屋ないいやつだ。そんなある日、図書委員を引退した先輩女子が訪ねてきた。亡くなった祖父が遺した開かずの金庫、その鍵の番号を探り当ててほしいというのだが……。

■感想
松倉と堀川は図書委員であり日常の謎を解き明かす冴えた頭脳の持ち主でもある。図書委員の先輩から亡くなった祖父が残した開かずの金庫の番号を探り当ててほしいと依頼がくる。

ここからは堀川と松倉がちょっとしたヒントを頼りに信じられないような推理を展開する。祖父から先輩が大人になったらわかるというヒントを与えられており、そこから図書の分類番号へとたどり着く。そこで堀川と松倉は無事なぞを解き明かし先輩に告げようとするのだが…。明るい日常の謎解きと言う流れにはならない。

かなりブラックな物語だ。祖父は死んだものと思っていたのだが…。日常の謎というと、ライトなミステリーを想像したのだが、そうではない。松倉は堀川の能力を信用して父親が残した遺産についての調査を依頼する。

ここでは純粋に松倉の亡くなった父親の宝物を探したいという思いが強いように感じた。それが堀川が真実を探っていく過程で新たな真実が判明する。この手の日常のミステリーにありがちな展開だが、松倉は何一つ嘘をついていない。ただ、言うべきことと隠すべきことを分けていただけだ。

父親が隠した宝物のありかをついに堀川が探り当ててしまう。ただ友達とはいえ深入りは良くないと考え、最後は松倉ひとりに任せることにしたのだが…。ここで堀川があることに気づき過去の新聞を調査する。松倉の父親絡みの事件を検索する際に、どのようにして松倉の父親の名前を見つけだすのか。

松倉の名前とその弟の名前から父親の名前を想像する。ありえない冴え方だ。そして、無茶な推理かと思いきや、それがずばりと正解してしまう。

ラストも松倉のちょっとした闇を見てしまう物語だ。



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