真・慶安太平記 


 2022.6.20      由比正雪の乱を独自の解釈で描く 【真・慶安太平記】

                     
真・慶安太平記/真保裕一
評価:3
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■ヒトコト感想
慶安太平記を作者なりに新たな説として描いた作品。そもそも、慶安太平記を良く知らないのだが、物語としては十分楽しめた。徳川家光の時代。「慶安の変」の裏では何があったのか。このあたりの歴史についてはあまり詳しくないのだが、家光の跡継ぎ問題が発端として、実は暗殺されたはずの忠長(家光の弟)が名前を変えて生きていた。

歴史のIFを描くような作品であることは間違いない。お家騒動の問題は、少しでも火種があると、それを事前に消すことに必死となる。例え徳川家であっても、家光の兄弟はお家騒動の種ということで、地方へ飛ばされてしまう。あまりに能力が高すぎると、逆に暗殺される危険性すらある。とんでもない時代の権力争いが描かれている。

■ストーリー
徳川の治世。戦世は遠くなり、政は将軍の意をくむ老中たちの掌中。度重なる改易によって主家を失い、幕府に恨みを抱く牢人があふれる江戸市中に一人の兵法者が現れる。名は由比正雪。その恐るべき企みとは。夥しい血を流して平らげられた世を、命がけで守り抜こうとした男たち、女たち。由比正雪の乱として知られる「慶安の変」の裏で、何があったのか。綿密な取材と大胆な仮説を元に歴史の脈動をあますところなく描ききった大河歴史小説。作家生活30年記念書き下ろし。

■感想
将軍徳川家光の時代。由比正雪の乱として知られる慶安の変を大胆な考え方で描いている。まず家光は男色の気があったというのに驚いた。戦国時代であれば当たり前なのかもしれないが、大奥に寄り付かないことで跡継ぎ問題が発生していた。

家光が絶対的な権力をもち、その側近たちは家光の天下を盤石なものとするため、ゴミ掃除をする。徳川家を狙う勢力はない。あるとすれば、それは自分の身内だけだ。本作では家光は能力のないダメな将軍という描かれ方をしている。ある意味、周りに助けられた存在ということなのだろう。

家光には兄弟がいた。忠長という能力があり将軍にふさわしい男だったのだが…。その能力が高いだけに家光の側近から敵対視され、ついには暗殺されてしまう。本作のメインはこの忠長をめぐる問題だろう。

家光には腹違いの弟がもうひとりおり、ひっそりと権力に興味がないふりをすることで、家光の監視の目から逃れている。例え兄弟であっても、権力争いのライバルとして見られるのは恐ろしい。兄が絶対的権力をもつ存在でありながら、その恐怖に怯えるというのは強烈だ。

慶安の変は由比正雪による反乱ということになっている。実は正雪の正体は忠長だったという強烈な考察をしている。まさに、源義経がモンゴルでチンギスハーンになった、というような流れなのかもしれない。

家光の側近は、正雪の正体にうっすらと気づきながら、その確証を得るために家光の弟である正之に言質をとろうとする。かなり強烈なインパクトがあるのは間違いない。慶安の変を知っていればより楽しめることは間違いない。

歴史のIFとしてはかなり面白い作品だ。



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