さよならに反する現象 


 2022.12.12      乙一らしい短編集 【さよならに反する現象】

                     
さよならに反する現象 [ 乙一 ]
評価:23
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■ヒトコト感想
乙一の短編集。死者や霊魂の類の短編が多い。そんな中でひとつだけ、おそ松くんのキャラクターが主となる探偵物語となっている。それだけ違和感があるのだが、他の短編は最近の乙一らしい作品となっている。特に「悠川さんは写りたい」などは、「一ノ瀬ユウナな浮いている」と近い形になっている。

「家政婦」についても似たような雰囲気となっている。幽霊が見えたり、幽霊と会話したり。ちょっとハートウォーミングな展開となるのは間違いないだろう。「そしてクマになる」も、リストラされたサラリーマンがクマのぬいぐるみを着てアルバイトをする。そこでの奇妙な出来事が描かれている。強烈なインパクトはないのだが乙一らしい雰囲気の作品となっている。

■ストーリー
心霊写真の合成が趣味の僕が撮影をしていると、一人の女性がカメラに映りこんできた。しかし撮影されたデータには無人の交差点が映っているだけだった。映りたがりの幽霊、悠川さんがこの世に残した未練とは……?

■感想
「家政婦」は、家政婦としてやってきた家には当たり前のように霊が存在し、そこの住人は普通に霊が見えているという状態の物語だ。家政婦としてやってきた女も霊が見えてしまう。生活に密着した霊という感じだ。

霊の法則としては、最近死んだ者が霊として現れることと、死んだ恰好で現れるという部分だ。家政婦が見た霊をきっかけとして事件を解決するような雰囲気の作品となっている。霊が存在し、そこからどのような事件が起きたのか。家政婦が霊を見て何かしら推理を展開するというのは、それなりにインパクトがある。

「悠川さんは写りたい」は、心霊写真に写りたい幽霊が出合ったのは、心霊写真を作ることが趣味の男だった。今の時代、技術が進歩したので昔ほど心霊写真は話題にならない。作ろうと思えばいくらでも作れるからだろう。それをベースとして、死んだ悠川さんが元カレに恨みをはらすために男に姿を見せる。

まさに死んだ若い女性が怨霊というよりも、どこかフレンドリーな感じで男と交流し、そのまま心霊写真を作り上げようとする。心霊写真の小説とはいえ、ほのぼのとした雰囲気があるのは間違いない。

「なごみ探偵おそ松さん・リターンズ」は、おそ松くんを探偵物語として描いているのだが、キャラだけをおそ松さんにしただけで、なぜこの短編に含まれてたのかが不明だ。「そしてクマになる」は、リストラサラリーマンがクマのヌイグルミを被りアルバイトをする。

そこに妻と子供が見ず知らずの男と一緒にやってきた。少しミステリアスで、クマのヌイグルミが本物のクマになるような、そんな雰囲気かもしれない。強烈なインパクトがあるのは間違いないのだが、それなりに流れとしての面白さがあるのは間違いない。

乙一らしい短編集だ。



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