三体Ⅱ 上 


 2024.2.1      嘘の概念がない三体世界 【三体Ⅱ 上】


                     
三体2 黒暗森林 上 [ 劉慈欣 ]
評価:3.5

■ヒトコト感想
前作で三体世界からの侵略が確定となった人類。三体世界からの侵略に備えた人類はどのような手段をとるのか。智子により人類の情報は三体世界に筒抜けとなる。ただ、ここで三体世界の新たな真実が判明する。生物たちのコミュニケーションの取り方として、考えたことがすぐさま相手に情報として伝わる。つまり思考を隠すという概念がない。

すさまじい設定だ。単純なエイリアンとして三体世界を描いていない。人類が想像できない新たな世界が本作では描かれている。そんな特殊な三体世界からの侵略に対して人類が選んだ対抗手段は…。面壁計画だった。4人の面壁者を選び、その人物は三体世界の侵略に備え、独自の対策をとることを許可される人物だった。

■ストーリー
人類に絶望した天体物理学者・葉文潔(イエ・ウェンジエ)が宇宙に向けて発信したメッセージは、三つの太陽を持つ異星文明・三体世界に届いた。新天地を求める三体文明は、千隻を超える侵略艦隊を組織し、地球へと送り出す。太陽系到達は四百数十年後。人類よりはるかに進んだ技術力を持つ三体艦隊との対決という未曾有の危機に直面した人類は、国連惑星防衛理事会(PDC)を設立し、防衛計画の柱となる宇宙軍を創設する。

だが、人類のあらゆる活動は三体文明から送り込まれた極微スーパーコンピュータ・智子(ソフォン)に監視されていた! このままでは三体艦隊との“終末決戦”に敗北することは必定。絶望的な状況を打開するため、前代未聞の「面壁計画(ウォールフェイサー・プロジェクト)」が発動。人類の命運は、四人の面壁者に託される。そして、葉文潔から“宇宙社会学の公理”を託された羅輯(ルオ・ジー)の決断とは?

■感想
まず、こんな世界を創造して物語化したことに衝撃を受けた。前作でさえも三体世界の特殊さについていくのがやっとだった。四光年もの距離が離れており、四百年後の侵略に備えて動き出す。人類の物理学の発展を遅らせる智子。

人類が想像できない世界が三体世界だ。よくあるエイリアンの侵略モノとは圧倒的な差がある。これまではエイリアンといえども人間と近い形となっていた。三体世界は根本が異なる。さらには人類の思考や言葉についての概念もないとくると、想像を絶する世界となっている。

人類の思考が理解できない三体世界。それはつまり、三体世界では考えたことがそのまま相手に伝わってしまう。人類のように謀略や陰謀などは存在しない世界だ。逆にいうと、それが三体世界を出し抜く唯一のチャンスだ。

人類は声に出さなければ情報が三体世界に通じることはない。面壁者は言葉では三体世界への様々な対策を打つが、その思考ではどんな隠し玉をもっているのかがポイントとなる。そんな、人類の未来を託された面壁者が本作のメインとなっている。

面壁者のひとりである羅輯は三体世界から要注意人物とされている。本作ではまだ羅輯の計画は判明しない。特殊なミサイルだとか、巨大な宇宙船で対抗するだとか、三体世界を撃退するような何かではない。ただ、羅輯の思考の中では何かしらの目算があるようだ。

羅輯は三体世界から狙われ、遺伝子をターゲットとした病気によりひん死の状態となる。ここからどのような展開になるのか。羅輯は冬眠し三体世界との戦いは近づいていく。どのような結末となるか全く想像がつかない。

すさまじい作品であることは間違いない。



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