2023.7.15 復讐は許されるべき?【さまよう刃】
さまよう刃
評価:3
■ヒトコト感想
東野圭吾原作の韓国映画化。日本でも映画化されたのだが、本作の方がより悲惨な具合が強い。中学生の娘をレイプされ殺された父親のサンヒョンが、復讐のために犯人である少年たちを探し出そうとする。娘との関係は決して良くはないのだが…。それでも父親の怒りはすさまじく伝わってきた。さらには犯人の少年たちの憎たらしい部分が強調されている。
自分が未成年とわかっていながらの行動の数々。どんな悪さをしたとしても逃げ切れると思い込んでいる部分が最悪だ。父親が最初の犯人を見つけた場面での怒りは強烈だ。バットで滅多打ちにしての殺害。直前に娘がレイプされる動画を犯人が見ているくだりがあるので、当然なのかもしれないが…。問題作であることは間違いない。
■ストーリー
町内の廃墟と化した銭湯で、冷たくなった姿で発見された女子中学生スジン。父親のサンヒョンは妻を亡くしてから男でひとつでスジンを育ててきた。一人娘の死を目の前にし、喪失感でただただ茫然とする。そんなある日、サンヒョンに犯人の状況が書かれた匿名のメールが届く。そこに書かれていた住所を訪ねると、少年たちに暴行され娘スジンの動画を見て笑うチョルヨンを目撃する。
理性を失い衝動的にチョルヨンを殺してしまうサンヒョンは、また別の共犯者の存在を知り犯人を捜そうとする。一方、スジンの殺人事件を担当する刑事オッグァンはチョルヨンの殺害現場を見てサンヒョンが犯人だと見抜き、追跡し始めるのだった。正義とは何か?誰が犯人を裁くのか?世論を巻き込み、事件は予想外の結末を迎える――
■感想
娘がレイプされ殺されたと知った時の父親の焦燥具合がすさまじい。男でひとつで育ててきたことから、すべてを失った気分なのだろう。そこから父親は犯人への復讐が人生のすべてとなる。すさまじい行動力で動き出す。
問題作であることは間違いない。作中では犯人の少年たちは、レイプした少女たちのことを何一つ覚えていない。殺したスジンのことも忘れている。父親が犯人のひとりに出会った際にも、タブレットを盗んだことに対する復讐と勘違いされる。これはさすがに父親としては許せないだろう。
少年の憎たらしさが秀逸だ。現代っ子というか自分たちが未成年ということを理解し、さらには躊躇なく残酷なことができる。序盤で父親が犯人のひとりを殺害したのだが…。犯人たちは人を殺しても雲隠れすれば逃げ切れると思っているのがすさまじい。
観衆は父親に感情移入してしまうだろう。警察はメンツのために父親を捕まえようとするのだが…。警察内部には父親に同情的になる者もいる。警察としては少年を守る必要がある。どこか、父親に復讐を遂げてほしいと思う者もいると感じた。
正義とは何か。現在の法律では復讐は許されない。裁判では情状酌量がある。世間一般の考え方としては、法律がすべてではない。ただ、本作の少年たちのような残酷な者たちへの怒りをどのようにしてぶつけるのか。父親が最後に主犯である少年を、殺害するのか。
ライフル銃を少年に向けたのだが、弾が入っていないということを父親は理解していた。少年に何かしら悔いる気持ちを植え付けたかったのだろう。娘が悲惨な死を遂げたと、覚えてもらいたかったのだろう。
日本版とはまた違った趣がある。
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