林檎とポラロイド [ クリストス・ニク ]
評価:2.5
■ヒトコト感想
ある日突然記憶を失った男を描いた作品。バスに乗っていると突然自分が誰だかわからなくなる。その後、病院へ入れられ検査されるのだが…。身元を証明するようなものがなく、そのまま記憶が戻らない場合、社会復帰するために訓練を受ける。新しい自分になるための訓練。毎日送られてくるカセットテープの指示の元ミッションをこなし、その結果をポラロイド写真に撮る。
実直に指示されたことを実行する男。客観的に見て、これがどんな治療の意味があるのかはわからない。最初はなんてことない日常のミッションであったのが、後半では突飛なミッションとなる。唯一わかるのが、自分が林檎を好きだったということだけ。ひたすら林檎を食べるシーンが印象的だ。
■ストーリー
「お名前は?」「覚えていません」――。バスの中で目覚めた男は、記憶を失ってい た。覚えているのはリンゴが好きなことだけ。治療のための回復プログラム“新しい 自分"に男は参加することに。毎日リンゴを食べ、送られてくるカセットテープに吹き 込まれた様々なミッションをこなしていく。自転車に乗る、ホラー映画を見る、バーで 女を誘う...―そして新たな経験をポラロイドに記録する。 ある日、男は、同じプログラムに参加する女と出会う。
言葉を交わし、デートを重ね、 仲良くなっていく。毎日のミッションをこなし「新しい日常」にも慣れてきた頃、買い 物中に住まいを尋ねられた男は、以前住んでいた番地をふと口にする・・・。記憶は どこにいったのか? 新しい思い出を作るためのミッションが、男の過去を徐々に紐 解いていく。
■感想
バスの中で目覚めた男は、記憶を失っており病院で治療を受ける。男は寡黙で何を考えているのかわからない状態だ。医者から指示されたのはテープレコーダーに録音された指示の元に行動し、その証拠の写真を撮る。
最初は単純な指示ばかりだ。自転車に乗るだとかホラー映画を見るだとか。驚きなのは、男と同じようにホラー映画の看板の前でひとりで写真を撮る人が後を絶たないという部分だ。それだけ同じように記憶を無くしている人がいるということなのだろうか?
同じプログラムに参加する女性と知り合いになる男。デートを繰り返して親密になる。ただ記憶を無くしているということが、何か男を正体不明のものとしている。林檎が大好きで店で林檎ばかりを買う。女とデートでダンスをするのだが、自然に男は体を揺らしてダンスをしている。
新しい日常に慣れてきた男なのだが…。突然、以前住んでいた場所を思い出したりもする。このあたり、突然記憶が戻るくだりは「宮松と山下」でも同じように記憶が突然蘇る場面があった。
カセットテープの音声を聞いてミッションを実行するという行為自体が、なんだかスパイのミッションのような雰囲気があり謎めいている。寡黙な男がまるでスパイのように指示された行動をとる。同じような女と共にミッションを実行していく。
ただ、記憶がないだけの男。そこに悲壮感はなく新しい日常を手に入れるかに思えたのだが…。全編通して主人公の男が寡黙なため、会話は乏しい。ひたすら寡黙な男が指示された行動をとるような物語となっている。
ミステリアスな雰囲気が良い。