宮松と山下 [ 関友太郎 ]
評価:2.5
■ヒトコト感想
暗く陰鬱な作品。ストーリー的にはそんな内容ではないのだが、恐怖を湧き立たせるような効果音が印象的だ。エキストラ俳優の宮松の日常が語られる。居酒屋でのんびりビールを飲んでいると突然別の客から銃で撃たれる。それは映画の一場面だった。別のシーンでは綺麗な奥さんに対して晩御飯をどうする?という問いかけを、歯を磨きながらする。次の瞬間、カットがかかる。
宮松は平凡な中年男性なのだが、ある日、昔の同僚という男と出会う。宮松は記憶を無くしており、本当の名前は山下といい、妹がいることがわかる。記憶を取り戻すために妹夫婦と暮らすのだが…。宮松が記憶をなくした経緯を思いだし…。全体的に暗く悲しい雰囲気の作品だ。
■ストーリー
宮松は端役専門のエキストラ俳優。来る日も来る日も、名もなき登場人物を生真面目に演じ、斬られ、射られ、撃たれ、画面の端に消えていく。真面目に殺され続ける宮松の生活は、派手さはないけれども慎ましく静かな日々。そんな宮松だが、実は彼には過去の記憶がなかった。なにが好きだったのか、どこで何をしていたのか、自分が何者だったのか。なにも思い出せない中、彼は毎日数ページだけ渡される「主人公ではない人生」を演じ続ける。ある日、宮松の元へある男が訪ねてくる……。
■感想
すべてが暗く恐ろし気な効果音が、一瞬ホラー映画だと間違えるほどの雰囲気がある。香川照之の苦み走った表情は、何かしら恐怖におびえているように見えてしまう。宮松の日常は、狭い部屋で台本を読みながらカップ焼きそばを食べるだけ。
きれいな女性と暮らしているよな場面が登場したかと思うと、それは映画の撮影の一部だった。車に乗っていると突然こめかみを銃で撃たれたり。エキストラとしての活動の幅は広いが、楽しんでエキストラをしているようには思えない。
宮松の元にタクシーの運転手を名乗る男がやってきた。実は宮松は山下という名でタクシーの運転手だったとわかる。記憶をなくし宮松として生活していたが、山下としての記憶を少しづつ思い出していく。
宮松には覚えがないが、バッティングセンターで素晴らしいバッティングをしたり、日本酒は苦手かと思っていたが、日本酒をおいしく感じたり。宮松は妹夫婦と暮らしていくうちに、記憶をかすかに思い出していく。少しミステリーの要素がある。宮松と妹の関係が物語のポイントだ。
実は宮松と妹は血のつながりがない。妹のダンナは元タクシーの運転手であり、昔の宮松を知っていた。なぜ宮松が記憶を失ったかが回想形式で語られる。明確に言及されてはいないが、宮松は記憶を取り戻していたのだろう。
あえて、記憶喪失のふりをして、妹夫婦の幸せを壊さないためにひとりでエキストラの仕事に戻る。ストーリー的には普通にファミリー的な物語として描けるはずが、妙に恐ろしい効果音と出演者全員が陰鬱な表情をしているのでホラー映画のように見えてくる。
ジャパニーズホラーそのものだ。