2023.1.2 ヴァーチャルだけで生活する未来はくる? 【リアルの私はどこにいる?】
リアルの私はどこにいる? Where Am I on the Real Side? (講談社タイガ) [ 森博嗣 ]
評価:3
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■ヒトコト感想
ウォーカロンシリーズ。今回はヴァーチャルな世界で生きることが当たり前となったため、リアルの身体が不要という流れが出来上がっている。そんな中で、ヴァーチャルな世界にいる間にリアルの身体が誘拐されるというとんでもない流れとなっている。リアルな体がどこにあるのかはわからないが、ヴァーチャルの中では生きている。仮にリアルな体が死んだとしてもヴァーチャルで生きることができる。
となると、リアルの身体の意味がないような…。作中でもその議論はされている。そして、すべての元凶となるのは、やはりAIが独自に進化しヴァーチャルの意識を作り上げたということになっている。自分が人間と思い込んでいるだけで、それすらもプログラミングされた意識となると、なんでもありな感じだ。
■ストーリー
ヴァーチャル国家・センタアメリカが独立した。南米の国や北米の一部も加え一国とする構想で、リアル世界とは全く別の新国家になるという。リアルにおける格差の解消を期待し、移住希望者が殺到。国家間の勢力図も大きく塗り替えられることが予想された。そんなニュースが報じられるなか、リアル世界で肉体が行方不明になりヴァーチャルから戻れない女性が、グアトに捜索を依頼する。
■感想
グアトが設計した、ウォーカロンと人間を見分けるシステムがポイントだ。ヴァーチャルで生きるある人物から、自分の身体が誘拐されたと連絡が入る。人間である自分の体がいつの間にかウォーカロンの身体に代わっていた。
それができる技術はすでにある。莫大な費用がかかるが不可能ではない。それをやることにどのような意味があるのか。オチとしてはそもそもヴァーチャルの意識はAIによりプログラミングされた意識であり、もともとは体は存在しなかったというオチだ。
自分が人間だと思い込まされていたヴァーチャルの意識。当然ながらリアルな身体があるはずが、ウォーカロンに代わっていた。実はもともと体などは存在していなく、ウォーカロンの身体は後付けで用意されていた。
それをグアトの機器で自分の身体がウォーカロンだと判明したので…。ヴァーチャルの世界で仕事をしその費用をヴァーチャルで使う。となると、リアルな身体は不要となる。現にそれを選んだ人もいる。究極のデジタルな世界だ。
AIが進化すると、もはや自分が人間であることすらコンピュータにプログラミングされた結果かもしれないと思えてくる。唯一救いなのは、グアトが作り上げた人間とウォーカロンを見分ける機器だけだ。それだけはAIの影響を受けない。
もはや人間とウォーカロンの境目がなく、ヴァーチャルとリアルの境目もない。そんな世界であれば、人間にこだわることにどんな意味があるのか。物語の流れからすると、人間であることの価値が今後示される気がする。
ヴァーチャルだけで生活する未来はくるのか。
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