ピアニシモ・ピアニシモ 


 2024.2.8      学校の地下にある死の世界への入口 【ピアニシモ・ピアニシモ】


                     
ピアニシモ・ピアニシモ 文春文庫/辻仁成
評価:2.5
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■ヒトコト感想
「ピアニシモ」の続編となる本作。前作ではヒカルという別人格を作って精神の均衡を保っていたトオル。本作ではトオルが意図せずヒカルが動き回ることで、トオルとしてはヒカルはすでに自分の別人格ではないかと思い始めている。物語はトオルとヒカルの関係や、トオルが通う中学に謎の殺人者が住み着き、少女の幽霊が出るという噂がメインとなる。地下にはもうひとつの学校があり、死の世界への入り口となっている。

LGBTの話やトオルの両親との関係などが複雑に絡み合い、物語はすすんでいく。ヒカルはトオル側というよりは、トオルに敵対するような立場となっている。死の世界からトオルは親友を助け出すことができるのか。幽霊だとかそのあたりの話が強い物語となっている。

■ストーリー
教室でもチャットルームでも「いるだけの人」トオル、彼にしか見えない親友ヒカル。孤独な少年がマンモス中学の闇に挑む。殺人者が潜み、少女の幽霊が彷徨い、地下にはもう一つの学校が。死の世界の只中へ、希望と想像力だけを武器に降りて行く、初めて愛した人を救うために。少年の奇跡を描ききった傑作長篇。

■感想
トオルの日々の学校生活の中で、ヒカルは目障りでしかない。他の生徒には見えないヒカル。教師の邪魔をしたり生徒にいたずらをしたり。トオルはヒカルの存在を他の人が気づかないことが信じられないでいる。学校ではただそこにいるだけの存在であるトオル。

学校内部では、謎の殺人者の存在や少女の幽霊がおり、その幽霊が生徒のひとりにメッセージを送るなど、オカルトチックな内容が続いていく。トオルはそれら学校内部での動きに流されるようについていくしかない。トオルの教室内部での存在感は薄い。

クラスメイト中に、男の見た目をしているがスカートを履いている生徒がいる。実は体は女だが心が男の生徒であり、ちぐはぐな見た目となっている。学校内部では浮いている存在であることは変わりなく、さらには幽霊からのメッセージを受け取れるなど、特殊な体質である生徒。

トオルはその生徒の女である部分を感じとってなのか、それともトオル自身に男を愛する素養があるのか。その生徒と近づき、そして愛し合うようになる。強烈なインパクトがあるのはやはりこのあたりかもしれない。

学校の地下に入りトオルは死の世界の入り口へと入る。一度は何者かに襲われ死の淵をさまようことで死の世界に入り込んだ。そこから抜け出したのだが…。今度は愛する人が死の世界に入り込んだことでトオルは助け出すために再び死の世界へと足を踏み入れる。

一気にオカルト臭が強くなる。ヒカルは別人格としてトオルの行動を否定し続ける。ヒカルが否定しているということは、トオルの心の奥底では自分の行動を否定しているのかもしれない。

前作とはうってかわった雰囲気となっている。



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