ペンギンの台所 


 2023.9.20      ホンワカとした気分になるシリーズ 【ペンギンの台所】

                     
ペンギンの台所 [ 小川糸 ]
評価:2.5
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■ヒトコト感想
ペンギンシリーズ。要は作者である小川糸が日々の出来事をつづったブログだ。何気ない日常であるので、大きな事件が起きるわけではない。「食堂かたつむり」の作者だけにおいしそうな食事が多数登場してくる。他の作者のこの手のエッセイに比べると、極端にひとつひとつが短い。そのため、サラリと読むことができるが、あまり印象には残らない。

作者が酒を飲むのを止めたというのは、ひとつのトピックかもしれない。食堂かたつむりが作家としてのデビュー作であり、これを小説の賞に申し込んだが最終選考にすら残らなかったらしい。この作品に目を付けた編集者はすごい。そのことがのちに評価され社長賞をもらうまでになるのはさすがという感じだ。

■ストーリー
苦節10年の末に、小説『食堂かたつむり』でデビューを果たした著者。執筆、サイン会、取材と怒涛の日々を送る彼女に代わって、ペンギンが台所デビュー。まぐろ丼、おでん、かやくご飯…。へとへとで家に帰っても、ペンギンと食卓を囲めば一瞬にして元気になれる。心のこもった手料理と仕事を通じての出会いに感謝する日々を綴った日記エッセイ。

■感想
ペンギンというのは旦那さんのことだ。食事を作るのは主に作者なのだが、たまに旦那さんが食事を作ることがあるらしい。その時に作った食事がマグロ丼で、作り方に個性があるというのが面白い。マグロ丼なら赤身を想像するのだが、トロを選んだらしい。

トロの表面を湯引きして食べる。確かに自分の常識では存在しない料理がでてくると新鮮に感じることだろう。自分好みはあるのだが、たまには新鮮な献立も良いのだろう。台所の主導権は譲らないというのが作者のスタンスだ。

食堂かたつむりが大ヒットして話題となり、あちこちでサイン会が開かれたのだろう。出版してから大ヒットするまでが本作の中で描かれている。一躍有名人となり、マンションの下の階の人からサインをねだられたりするらしい。急に有名になったことに対する愚痴や嫌な体験はまったく描かれていない。

恐らくだが意識的に嫌なことは書かないようにしているのかもしれない。普通に考えれば、今まで平穏な暮らしをしていたのが、急に有名人となりサインをねだられるのは良いことばかりではないはずだ。

日々をつづったブログなので、そこまで事件は起きない。唯一の不快な出来事としては、渋滞にイラついた車が、歩行者を邪魔するための運転をしていた箇所だけかもしれない。それだけおちついてのんびりとした日々を送っていると思えた。

心のこもった手料理を食べる。それだけで元気になれる。二作目の作品についても語られている。少し歯車が狂っていたら作家として日の目を見ていない可能性すらある。何も大きな出来事のない日々なので退屈に感じるかもしれないが、ホンワカした気分になれることは間違いない。

ペンギンシリーズはすべてホンワカとした雰囲気だ。



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