2022.11.30 吸血鬼の末裔である者たち 【愚かな薔薇】
愚かな薔薇 [ 恩田陸 ]
評価:3
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■ヒトコト感想
恩田陸得意の異能力というか、不思議な力関係の物語なのだが、その力がどのようなものかはまったくわからない。物語がすすんでいくにつれて、特殊な能力が明らかとなる。今回は十四歳の少女が特殊なキャンプに参加し変異していく。この変異がどうなるのかは語られない。そして、「虚ろ舟乗り」という言葉や変異が始まると血を欲するなど、吸血鬼的な展開や舟が宇宙船をイメージしているのかなど、特殊な雰囲気があるのは間違いない。
序盤では呪いやオカルト的な雰囲気がありながら、後半はがっつりとSFの展開となる。虚ろ舟乗りの適正があるというのは、宇宙への旅ができる。魂だけが地球を離れるなど、想像を絶する展開となる。頭が追い付いていかない、というのが正直な感想だ。
■ストーリー
夏が近づく季節、母方の故郷・磐座を訪れた奈智。十四歳になると参加することになる二か月に及ぶ長期キャンプは、「虚ろ舟乗り」の適性を見極めるためのものだった。キャンプの本当の目的を知らないまま参加した奈智は、磐座の地や両親の死にまつわる因縁、謎めいた人物たちに翻弄されていく……。恩田陸が放つ、吸血鬼小説の新機軸! SF長編。
■感想
何も知らない十四歳の少女がキャンプに参加することで変異の素質を見せる。そもそも変異とは何なのか、主役の奈智がわからないため、読者も同じように何もわからないまま物語を読み進めることになる。虚ろ舟乗りとは何なのか。
奈智は虚ろ舟乗りの適正があり、変異が始まると血を欲するようになる。吸血鬼のように他者から血を吸う。ただし、吸われた側も恍惚感がある。少女が変異し自分の意識のないところで暴れることもある。情報が小出しにされながら、物語の全容がだんだんと明らかとなる。
中盤から虚ろ舟乗りというのが何かが、だんだんと明らかとなる。血を吸うだとかオカルト的な雰囲気から、一気に宇宙だとかSFな雰囲気が強くなる。地球の滅亡を危惧し、変異した虚ろ舟乗りは死ぬことがない。つまりは宇宙船に乗って宇宙へと向かうことのように思えた。
そこから、奈智の両親の話へとうつり、もしかしたら二人も宇宙へ行ったのでは?というような流れとなる。変異と血を吸うことがキャンプ中でのメインではあるのだが、暴走することもある。決定的な何かが判明するまで、情報は小出しにされていく。
ラストでは虚ろ舟乗りの真実が明らかとなる。一気にSF風味が強くなり、さらには精神世界の話となる。いきなり肉体は地球に残して精神は宇宙へと飛び立つというのは強烈だ。奈智の両親も死んだということになっていたが、実は両親とも宇宙へ精神は旅立っていた。
奈智の元に両親が姿を見せる。結局は宇宙人の末裔というかその素養がある者が宇宙へと旅立つことになるのだろう。宇宙人になる、というのを昔からある風習だとかオカルトでごまかしているような感じだ。
恩田陸らしい雰囲気の作品だ。
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