オパールの炎 (単行本) [ 桐野夏生 ]
評価:3
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■ヒトコト感想
桐野夏生の作品。一風変わった作品であり、インタビュー形式で物語の概要が見えてくる。塙玲衣子がどのような人物かが判明してくる。実際にモデルがいるようだ。「中ピ連」代表、榎美沙子をモデルとしているようだ。この人物についてほとんどわからないが、塙玲衣子が晩年に孤独死するまでを様々な関係者の目線で描かれている。
頭が良く美しい女性が突然女性の権利を求めて立ち上がる。強烈なのは、不倫を働いた男の会社の前でデモを行う実行力だ。あえて男をさらし者にするように実名でデモを行う。こうなると対象の男は社会的に抹殺されたも同然だ。それら塙玲衣子の活動の被害者家族や、上司たちからの塙玲衣子に対する恨みなども描かれている。
■ストーリー
「なぜ私が姿を消すことになったのか、伝えたい。話したい。しかし、できない。」彼女は、主張し、批判され、糾弾し、嘲笑されて、突然、姿を消した。時を経て集められたいくつもの証言から、時代に埋もれた一人の女の闘いが今よみがえる――。世の「理不尽」を見つめ続けてきた著者が描く、衝撃の最新作。
■感想
塙玲衣子が死んだ後に、女性週刊誌で連載するために様々な人物にインタビューを行う。塙玲衣子は架空の人物ではあるが、どうやらモデルがいるようだ。一人の女の激しい闘い。塙玲衣子の本心についてはラストに手記が描かれている程度で、どのような心境で行動したのか不明だ。
幼少期から頭が良く、田舎の村の中では神童と呼ばれていた塙玲衣子。進学校に通い、東大に進学する。医者の夫と結婚し幸せな日常を過ごしていたかと思いきや…。
塙玲衣子が変わったきっかけは特に描かれていない。女の権利を主張し、泣き寝入りする女性たちを助けようとする。持ち込まれた女性の言い分を受けて塙玲衣子たちは動き出す。夫が不倫し離婚されそうだ、なんて訴えが入ると、すぐさま横断幕に男の名前を書いて、男が勤務する会社の前でデモを行う。
大声で男の名前を叫び罵詈雑言を浴びせる。こうなると、男の社会的な信用は地に落ちてしまう。不倫はさておき、妻をコントロールできないダメ夫というレッテルを張られる。
過激な行動をしてきた塙玲衣子は、議員に立候補したりと様々な活動をしている。大企業の社長をターゲットにしたことで、脅迫の罪をきせられかける。選挙に負けてからは、ひたすら落ちぶれていく。晩年には、日々の生活費すら苦しいような生活をし、孤独死を迎えている。
強烈な活動をしてきた頭の良い女性が、変わっていく。強烈なインパクトがあるのは間違いない。日々の生活費を知り合いに借りてそのまま音信不通となる。そこまで生活が困窮するのはすさまじい状況だ。
塙玲衣子の人生が見えてくる作品だ。