おまえの罪を自白しろ


 2024.6.20    孫を誘拐された政治家の決断【おまえの罪を自白しろ】


                     
おまえの罪を自白しろ [ 水田伸生 ]
評価:3

■ヒトコト感想
原作はすでに読んでいる。原作のイメージはミステリアスな雰囲気が強くでていた。本作でもその方向性は変わらない。政治家の宇田清治郎のスキャンダルをめぐるミステリーとなっている。長女の娘が誘拐された。身代金の代わりに清治郎の罪を会見で暴露しろというのが要求だ。ラストまで見てしまうと、なんだか妙に手間がかかりリスクしかない計画だなぁと思ってしまう。

政治家家族のひりつくような家族会議。長男は県会議員、次男は清治郎の秘書、長女の夫も市議会議員という絵にかいたような政治家家族だ。清治郎が念願の大臣の座につく直前に総理がらみのスキャンダルが浮かび上がる。清治郎は議員生命を絶つ思いで孫娘を助けるために会見を開くのか…。

■ストーリー
政治家一族の宇田家の次男・宇田晄司(中島健人)は建築会社を設立するも倒産し、やむなく政治スキャンダルの渦中にいる国会議員の父・宇田清治郎(堤 真一)の秘書を務め、煮え切らない日々を送っていた。そんなある日、一家の長女・麻由美(池田エライザ)の幼い娘が誘拐された。犯人からの要求は身代金ではなく、「明日午後5時までに記者会見を開き、おまえの罪を自白しろ」という清治郎への脅迫。それは決して明かすことが許されない国家を揺るがす”罪”だった。権力に固執し口を閉ざす清治郎―。 晄司はタイムリミットまでに罪に隠された真相を暴き、家族の命を救うことができるのか !?

■感想
長女の娘が誘拐された。身代金を要求するのではなく清治郎の罪を自白しろという要求だった。清治郎の罪は、政治の世界ではよくあることのように思えた。総理の知人へ便宜を図るために国交相に働きかけて橋を建設する位置を変更する。

政治家的な立ち回りなのか、清治郎は言質を取られるような証拠は残していない。本作の主役は清治郎の秘書である次男であり、正義の気持ちに燃える男だ。対して長男は宇田家を守ることを第一と考え、自分が清治郎の跡継ぎだと思い込んでいる。

長女の娘が誘拐され、脅迫されているにもかかわらず、清治郎はすべての罪を自白したりはしない。ありきたりなパワハラ疑惑を暴露する程度だった。次男と清治郎の思いは異なっている。清治郎は自分が引退した後にも、自分の地盤を家族に引き継ぎたいと考えている。

次男は純粋に姪のことを助けたいと思っている。政治家家系のゴタゴタはひりつく緊張感に満ちている。誰が清治郎を追い落とそうとしたのか。次期総理を目指す幹事長に取り入ったりと、先見の明を見せる次男の動きがすさまじい。

ラストですべての黒幕が明らかとなる。思いもよらない人物が犯人というのは定番だろう。ただ、清治郎に罪を告白させることが、すべて犯人の目論見通りにはなっていない。かなりリスクのある展開であることは間違いない。

清治郎の罪が他者の家族を崩壊させたのは事実なのかもしれない。政治家なので、ある程度の決断は必要だろう。その決断の結果で、不幸になる人もいるかもしれない。誘拐の目的が罪を自白させるという新しい展開ではある。

原作を忠実に表現しているような気がした。



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