ヌエの碑 


 2024.5.13      放射性物質がらみの物語 【ヌエの碑】


                     
ヌエの碑 (講談社ノベルス) [ 京極夏彦 ]
評価:2.5
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■ヒトコト感想
京極堂シリーズ。17年ぶりに新作が発表され楽しみにしていたのだが…。初期のころのわくわく感は失せている。キャラクターが確立されているとはいえ、題材が平凡だと面白身がない。このシリーズの面白さのメインである妖怪の仕業としか思われないような事件が発生し、それを京極堂が解き明かすという流れがない。

他殺体が消えただとか、謎の失踪者や、小さな女の子が父親を殺したと告白するとか。ひとつひとつの出来事が小ぶりなので、全体として深刻な雰囲気とならない。放射性物質の話や、何か秘密の計画が実行されていたであろう怪しさはある。光る猿だとか、いかにも仕掛けがある風な謎もある。ただ、どれも強烈なインパクトがあるわけではない。

■ストーリー
百鬼夜行シリーズ17年ぶりの新作長編がついに!殺人の記憶を持つ娘に惑わされる作家。消えた三つの他殺体を追う刑事。妖光に翻弄される学僧。失踪者を追い求める探偵。死者の声を聞くために訪れた女。そして見え隠れする公安の影。発掘された古文書の鑑定に駆り出された古書肆は、縺れ合いキメラの如き様相を示す「化け物の幽霊」を祓えるか。

■感想
800ページを超える分量の本作。このシリーズの売りであり、派生した情報のうんちくがあるのだが、今回もそれは健在だ。神社仏閣の古くからの風習や、出来事が何かしら事件に関係するのか。京極堂、関口、益田、木場とそれぞれが別の目的のために日光に集まる。

それぞれが別の謎を調べるためにやってきたのは日光で、それぞれの謎が実は裏ではすべてつながっていた。お決まり通り、ラストは京極堂がすべてを明らかにする。定番的な流れではある。

ヌエが本作の妖怪となる。ただ、ヌエが殺人を実行しただとか、死体を隠したということにはならない。何かしら不思議な出来事が起きると、昔の人はそれを妖怪のせいにした。そのパターンが今までのシリーズの売りであり、面白さのポイントだった。

シリーズの前作もそうだが、だんだんとネタ切れしている感が強い。複数の出来事が重なりあい、戦争前に国策として何かしら怪しい出来事が実行されていた。それにかかわる者たちは国に守られながら、ひそかに任務を実行していた。

結局は特高が裏で暗躍しており、死体を持ち帰ったり、隠していたり。物理的に実行が不可能だとか、ありえないトリックがあるような類ではない。誰かが裏で動いていたなら、それが答えとなり、特高が絡んでいただけという答えしかない。

その裏にある壮大な計画は確かにインパクトがある。光る猿にも理由がある。何もない田舎の村で放射線障害で死亡した人物の存在が、何かを暗示しているような恐ろしさがある。長大な物語にしては…。という感じだ。

期待外れと言わざるおえない。



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